幼い頃、小学の校庭で見た「謎の飛び降り女性」……。それから約20年後、素性もわからないまま、突然現れては消えた彼女の存在を、筆者は再び感じることになる。

 遠藤マメさんが見た「おかっぱ頭で異様に首が長い女」とはいったいなんだったのか? 新宿、池袋、六本木……東京中の「怖い話」を集めた新刊『東京の怖い街』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

御徒町に住む筆者が見た「おかっぱ頭で異様に首が長い女性」とはいったい…。写真はイメージです ©iStock.com

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忘れられない恐ろしい思い出

 幼い頃、御徒町という街に住んでいた。国鉄の御徒町駅(現在はJR)からほど近い小学校に通っていたが、当時の忘れられない恐ろしい思い出がある。

 私が小学校4年生のときのことである。当時、その小学校には「校庭開放」という、子どもたちが放課後に学校の校庭で好きに遊んで良い、という時間が設けられていた。生徒だけでは危険と判断してのことか、先生が1名、校庭開放で遊ぶ児童を見守るシステムであった。

 ある日。やけに薄暗い日であったことを覚えている。雨が降りそうだったからか、まばらな数の児童しか集まっていない校庭開放の日に、その事件は起きた。

 低学年の児童数名が屋上を指さすので、そちらを見てみると、女性が4階の屋上の手すりを乗り越えて立っていたのだ。その女性は、おかっぱ頭で異様に首が長かったことをはっきりと鮮明に覚えている。そのままでは落下してしまう位置にいるため、慌てて職員室にいる先生を呼びに行った。その日の担当は、まだ赴任したての若い女性教諭で、屋上を見上げるなり息を飲み、どう対処したらいいか分からない、という様子でうろたえるばかりであった。

 すぐに児童たちが大きな悲鳴をあげた。屋上の女性が飛び降りたのだ。

 幼い私は、女性が地面に叩きつけられる音を聞くのが怖くて耳をふさぎ、目も閉じてしまった。地面への衝突音は周りの生徒からの悲鳴にかき消されたか、または落下地点のしげみに落ちたからか、一切聞こえなかった。若い女性教諭は、意を決して恐る恐るそのしげみに近づいたが……。キョトンとした顔で何度かそのあたりを見回すと、ひきつった顔で職員室に走って戻っていき、数か所にヒステリックな泣き声で電話をかけていたのを覚えている。

 落下したはずの女性が、忽然と姿を消していた、というのである。その後、知らせを聞いてやってきた教頭先生らの意見により、落下した女性が軽傷であったため、すぐに走って逃げ去ったのだろう、という結論になったが……。小学生の私でさえ、そのようなことはあり得ないだろうと思ったものである。次の日以降、教室中の話題になったのは言うまでもない。