撮影のため、歌舞伎町のホストクラブに訪れたカメラマンたち。撮影終了後、機材を下ろすために使うエレベーターで遭遇した「いるはずのないもの」とは……?

 新宿、池袋、六本木……東京中の「怖い話」を集めた新刊『東京の怖い街』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

歌舞伎町のホストクラブで遭遇したものとは… 写真はイメージです ©iStock.com

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「あっ」ビルの6階から落ちた女性

 いわゆるホスト遊びというものが、女性客がお気に入りホストにいかに金を使うかを競う「見栄」の遊びだ、というのはよく言われることである。

 そうなると当然トラブルも発生する。「掛け(売掛、いわゆるツケ)」を払えなくなった女性客が「飛ぶ(逃げるの隠語)」というのもよく聞くし、色恋営業の果てに店の目の前のビルの屋上から文字通り「飛ぶ」といった話も、ホストのメッカ・歌舞伎町に出入りしている人間ならめずらしく感じないだろう。

 雑誌カメラマン時代、僕もホスト街のど真ん中でビルの非常階段から女性が身を乗り出し、自分の担当のホストへの恨み言を叫んでいた場面に遭遇したことがある。警官や人混みがどんどんと集まってくる中、彼女は足を滑らせたのか自らの意思なのか、「あっ」と驚いたような声を出し、頭をガクッとさせて地面に落ちた。

 6階の高さから、おそらく膝から地面に着いたのであろうが、僕の目からは縦になっていた体が一瞬丸くなり、それから横に伸びたように見えた。一瞬遅れて重い「ベチッ」という音が周りの雑居ビルに反響したのを今でも覚えている。

 彼女の体はしばらくガクガクと震えているようで、頭のあたりから黒い血が広がっているように見えたが、警官がすぐに周りを囲んで見えなくなった。