快進撃はどこまで続くのか。久しぶりに胸を躍らせてくれる投手が楽天に現れた。宮森智志のことだ。他球団のファンの間ではまだまだ知名度は低いかもしれないが、これから必ず伸びてくるであろう“ダイヤの原石”について書いてみたい。
ニューヒーローの誕生を予感させたプロ初勝利
支配下登録の期限が迫っていた7月末のある日。チームにいる育成選手のうち、「支配下登録されそうな選手」の取材をかけていた。複数の関係者から名前が挙がったのが背番号130の右腕だった。
ファームでは抑えを任され、両リーグトップの17セーブをマーク。「エグい球を投げますよ!」「1軍でも通用する」と周囲の評価は軒並み高かったのもうなずける数字を残していた。その数日後に宮森の支配下登録の発表があった(記事にできなかったのは無念でしたが……)。
晴れて2ケタ番号を手にした右腕は8月2日のロッテ戦(楽天生命)でプロ初登板。1回2奪三振無失点と上々の滑り出し。ここから破竹の勢いでゼロを並べていく。同7日のソフトバンク戦(ペイペイD)では0―1の5回にマウンドに上がると、年俸420万円の男が6億2000万円の柳田を三振に仕留めるなど、1回1安打無失点で切り抜けた。直後に味方が逆転し、プロ初勝利が舞い込んだ。「想定より早くてチームに(白星を)もらったという感じ」。初々しい表情で喜ぶ姿はニューヒーローの誕生を予感させた。
ドラフト指名会見で「大リーグを目指して頑張ります」
この日から遡ること295日前。ドラフト会議で育成ドラフト1位指名を受けた宮森は直後の会見で大きな野望を語っていた。
「大リーグを目指して頑張ります」
周囲は「ポカ~ン」とした様子だったという。
四国アイランドリーグ高知の吉田豊彦監督は「バカ野郎、まずは支配下登録されることだろう」とすかさずツッコミを入れたことを笑いながら教えてくれた。
プロで通算81勝を挙げた吉田監督は「肩甲骨、肘の柔らかさがあった。ゲームで投げればボールが暴れていた」と最初に受けた印象を語る。遠投もスピンが効いたホップするような球を投げていたというが、「ブルペンに入って18.44メートルの距離になると高めに浮いたり、シュート回転をしたりしてましたね」と悪いクセを指摘。187センチの身長から振り下ろすように投げ込まれる150キロを超える直球が最大の魅力だが、一方で制球面に荒さがあったため、吉田監督は「リリースポイントを安定させること」を最初の"宿題"と課した。
流通経大時代は目立った成績は残せず無名の存在だった。プロへの道が開けたのは、地道に努力を続けられる人だったからだろう。練習熱心で人知れず己と向き合う姿を見ていた吉田監督は「宮森は試合後もシャドーピッチングやネットスロー、下半身の動作の確認など、おそらく大学時代から続けていたことをずっとやっていました。『うまくなりたい』という気持ちが強いので、(課題を)そのままにしておくことができない。いいものを求めて、やらなきゃいけないことを一人で黙々やれるのがプロ向きだなと思いました」と証言する。