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二階堂ふみが目覚めたものは…

 実際、いまや二階堂はアクティビストとしての一面も持つ。直接的なきっかけは、ゾイという保護犬を引き取ったことだった。ゾイが来てからというもの、物質的なものではない喜びや幸せを与えられ、彼女の生活は豊かになったという。その一方で、保護されるまでは劣悪な環境にいたらしいゾイの境遇から、考えさせられることも多かった。

《自分たちがいかに人間以外の動物を犠牲にして生活しているのかということがわかってきたんです。ファーやレザーや羽毛や、それだけじゃなくて環境のことも……。私はこんなに無知だったのかと、すごく恥ずかしくなって。そういったことをきっかけにして、さらにいろいろと動物の問題について調べるようになりました》(『エル・ジャポン』公式サイト2020年2月28日配信)。

©文藝春秋

 これが二階堂が動物愛護の活動をはじめ、環境やジェンダーの問題などについて社会に提言したりアクションを起こす転機となる。2020年にはNHKの紅白歌合戦で紅組司会を務めたが、このときの衣装にも彼女なりにメッセージが込められていた。もっとも反響があった赤いパンツスーツはスタイリストが用意したもので、《華やかなドレスの方が相応しいのかなと考えたのですが、女性も男性も自立した人がカッコいいと思うから、その象徴になったらいいなと1着目に》持ってきたという(『CLASSY.』公式サイト2022年8月27日配信)。そのほかブランドやデザイナーの哲学に共鳴して選んだ衣装もあった。

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「感情のたづなを自分で持って人とどう向き合うのか」

 このように自らの主張を躊躇なく発信する二階堂だが、自分と違う意見や差別に対しては、《少なくとも自分が加害者にならないことを意識し》、けっして攻撃的にはならないよう心がけているともいう(『CLASSY.』公式サイト2022年8月26日配信)。そこには最近、初めて海外の作品に参加した経験も生きているようだ。その現場では、参加した人々が言葉も文化も異なるゆえ、まずお互いを認めるところから始めたという。《そんな経験もあり、違うことに腹を立てるのではなくそれを認めてどう交わるか、感情のたづなを自分で持って人とどう向き合うのか、と考えることは増えました。まだ模索中ですが、攻撃ではない方向で人と人が交わっていけるといいなと思っています》と彼女は語る(同上)。

 芸能人が社会的な発言や行動をとることに対し、世間ではいまだ逆風も強い。そのなかで、二階堂のように実績も人気もある俳優が積極的に行動しているのは頼もしく思える。かつて「私は『戦争が悪い』と一言で片付けるのが嫌い」と語った彼女だけに、今後も硬直した考えに陥らず、さまざまな視点で物事をとらえながら、きっと俳優としてもさらに成長していくに違いない。