人情味溢れる「劇団・星野ドラゴンズ」
あの時代、星野さんも選手も若く、チームは変革期であったため、星野ドラゴンズというチームは、山あり谷ありを繰り返して皆が成長していく一つの劇団のようでした。
星野さんの監督初勝利にウイニングボールをそっと渡した20番の後継者小松辰雄投手。星野さんに怒鳴られ、殴られ、罵られても逃げ出さずにレギュラーを掴んだ中村武志捕手。1年目から才能を見出されミスタードラゴンズに成長した立浪和義選手。星野さんの起用に意気を感じ、熱い熱いプレーを魅せた仁村兄弟。ガッツの塊、彦野利勝選手。代打の切り札、川又米利選手。ベンチでは常に中腰&ギラギラした目でチームを盛り上げた“星野組の鉄砲玉”小松崎義久・岩本好広両選手。そして、サヨナラホームランで選手全員にもみくちゃにされ、嬉しそうな照れ笑いを浮かべる千両役者の落合博満選手。
その中心には若き座長、星野仙一さんが常にいて、泣いたり笑ったり怒ったり怒ったり怒ったり……。そんな人情味溢れる「劇団・星野ドラゴンズ」が好きでした。時代が変わったとは言え、今のドラゴンズに欠けているもののヒントがこの時代にはあったなぁ…と思いながら家路につきました。
1月6日午前6時、緊急LINEニュースで星野仙一さんの訃報を知りました。肩書は「楽天球団副会長」。フリーな立場ではなく公式の肩書きだったことは、ドラゴンズファンに対する星野さんの優しさだったと受け取っています。
星野さん、やっぱりどうしようもなく大好きです。今でも、もう一度ドラゴンズに帰ってきてくれることを信じている自分がいます。変わりきったドラゴンズを助けて下さい。せめてもう一度だけ「バカヤロー」と怒鳴って下さい。
どうしようもなく悔しいけど、星野仙一さんのご冥福をお祈りいたします。
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