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「日本ファクトチェックセンター」が設立されても変わらない“日本語圏インターネット”の世情

「日本ファクトチェックセンター」が設立されても変わらない“日本語圏インターネット”の世情

2022/10/12
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 日本のJFCの編集主体を担う人材としては適任の一人であり、いろいろ批判もされていますが、気にすることなくやるべきことを淡々とやっていただければと願っています。

 運営委員長には京都大学教授として著名な憲法学者、曽我部真裕さんが就任し、巨人ファンみたいなオレンジ色のTシャツで取材に応じるフランクなお人柄で、これも(本人の立場や本件JFC事業の重要性のバランスがとれているかは別として)信頼するに足る充分な人選なのではないかと思います。

 他方、編集部の体制では朝日新聞関係者が並び、他にいなかったのかという気持ちでいっぱいになります。関係先複数に「何で朝日新聞ばっかりなんですか。他にいないんですか」と尋ねたら、あっさり「誰かほかにいい人いませんかね」という話が返ってきたことも加味しますと、いろんな意味で過渡期なのかなあと思っております。

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ネットに限定してファクトチェックをする仕組みの必要性

 で、JFCのファクトチェックガイドラインでは、第19条に「対象言説の設定」という内容があり、運営委員長の曽我部さんが「やれ」となれば編集長の古田さんが「はい」となるような内容になっているように読めます。当初からネットではJFCのファクトチェック対象に新聞やテレビが含まれないことに不信感を持った人が批判をしていて、確かに条文を見る限りよく分からんのでJFCに問い合わせをしたところ、その上部団体のSIAから回答がありました。

 その内容とは「報道機関は、報道倫理に基づく訂正の仕組みがある」「総務省プラットフォームサービスに関する研究会やSIAの報告書から、ネットでのガセネタを優先する」「立ち上がったばっかでマンパワーが足らん」という3点だったんですが、これは前述藤代さんが執筆した記事も踏まえて考えても、ネットに限定してファクトチェックをする仕組みにする必要がどこにあるの、という疑問は晴れません。総務省の研究会やSIAのような業界団体が、ネット向けのファクトチェック機関が必要だと結論づけたのでそのようになったという話に過ぎず、それは単に業界側の都合でしかないからです。

 テレビについては、NHKと民法各局がカネを出して運営している放送倫理・番組向上機構(BPO)がテレビ番組の適正な放送状況をモニタリングし、問題があったら是正させる一定の強制力があるのは事実です。しかし、それは主に放送法1条2項「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること」など、日本国民全体の財産で限りある電波をテレビ局が事実上寡占で使うにあたり、その利用目的が公共の利益に資するようNHKも民放も人権や不偏不党の原則を守りましょうね、という大原則があるから成立するわけですよ。