プロ野球のロッテ球団は10月7日、新監督に吉井理人氏(57)が就任すると発表した。その5日前に電撃的に退任を発表した井口資仁前監督の後任となる。当初はチーム一筋で通算2000安打を達成した福浦和也打撃コーチの昇格が有力視されていたものの一転、今季はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表の投手コーチやロッテの「ピッチングコーディネーター」として活動していた吉井氏の抜てきとなった。
吉井新監督は球団公式サイトを通じ「ただ、ただ驚いています。これまでコーチとしての役割ということで勉強をしながらやってきましたが、これからは全体のマネジメントを任される立場になるということで身が引き締まる思いです」と今回の人事が「青天のへきれき」であったことを窺えるコメントを発表した。一方、福浦打撃コーチは吉井新体制でヘッド兼打撃コーチを務めることも発表された。
ロッテでは“窓際”のポジションにいた吉井氏の復権。かねて吉井氏との確執が囁かれていた井口前監督への「当てこすり」との声が聞こえるなど、波乱含みの船出となる。
「令和の怪物」佐々木朗希投手をブレークに導く
吉井新監督は1984年に近鉄にプロ入り。98年~2002年はメッツなどMLBでもプレーし、日米通算121勝を挙げた。引退後は日本ハム、ソフトバンクで投手コーチを歴任した。現役最終年に所属したロッテには2019年に投手コーチとして復帰し、20年からは「令和の怪物」佐々木朗希投手(20)の指導に当たっていた。その佐々木は今年4月に完全試合を達成するなどブレークを果たした。
「あれは吉井さんが我慢して育ててきた成果。球界の宝を扱うプレッシャーを口にしながらも無理はさせず、自分の理論を押しつけることなく、特に体調管理を中心にコミュニケーションを取ってきた。朗希からの信頼も厚く、これで来年は本来の育成の軌道に戻ることが期待できる」(チーム関係者)
佐々木は今季、序盤は快投を続けた。登板間隔を十分に空けながらローテーションに入ってきたが、夏場以降は失速。結局9勝(4敗)と2桁勝利にも届かなかった。
「チームでは吉井さんがコーチだったらもっと勝てたと言われた。重光(昭夫)オーナーもそのことは把握していたはず。朗希は日本球界の宝。一人前にできなければ、ロッテは球界全体から責められることになる。オーナーが福浦さんではなく、吉井さんに監督を託したことは朗希を一番育てられる人だからだろう」(同)