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 しかし、5位に終わった上、河合克美球団社長が自身の娘をマネジャー登録して公式戦にベンチ入りさせるという前代未聞の「公私混同問題」が発覚したことも影響し、重光オーナーは腹心のコーチ陣の刷新を求めた。

「井口監督は受け入れられない条件だったようだ。吉井さんをコーチ復帰させることも入っていたのかもしれない。井口監督は『オーナー家にやられた』と言っているようで、解任に近い辞任だった」(球界関係者)

重光昭雄オーナー ©時事通信

佐々木を一人前に育てることが使命

 こうして井口前監督は今季最終戦の10月2日、本拠地でのセレモニーのあいさつで、コーチや選手でさえ初めて知ることになる退任を表明するに至ったのである。

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 吉井氏が球団から新監督就任の要請を受けたのは、その数日後だった。本来、監督の希望が反映されるはずのコーチ陣の“組閣”は既に球団主導でほぼ済んでいた。

 しかも、この時点では球団から契約年数の提示はなかった。吉井監督は親しい関係者に自らの任期について「福浦監督までの繋ぎです」と語っている。

 福浦氏は選手時代からロッテ一筋。地元千葉出身の名球会選手で、誰もが認める監督候補である。大事な人材だけに、今季までの打撃部門に加え、投手部門も掌握するヘッドコーチとして吉井監督の下でもう数年学ばせたいという意図がオーナーサイドにあると窺える。

 ただ、監督交代の経緯はどうであれ、吉井新監督の誕生は佐々木にとって朗報には違いない。プロ入り後、つきっきりで指導を受けていたコーチが絶対的な権限を持つ監督になったからだ。逆に吉井新監督はコーチ時代より、はるかに重い責任を背負うことになる。

「佐々木を一人前にするための監督人事と言っても過言ではない。あれだけの逸材をケガなく育てることは使命。(ポスティングシステムによる移籍で年俸などの年齢制限がなくなる)25歳になれば、いつでもメジャーに送り出せるよう、来季から足場固めをしなければならない」

 前出の元NPB監督は指摘する。吉井新監督には他球団にはない覚悟が求められている。