「犯人がわかれば刑が軽くなるかもしれない」
覚醒剤事件で追い詰められたヤクザ男が差し出したのは、証拠ではなく都合のいい名前だった。アリバイも物証もないまま、無実の青年(前川彰司さん)は凶悪殺人犯に仕立て上げられていく。昭和61年の冤罪事件「福井女子中学生殺人事件」はなぜ起きたのか?
新刊『世界で起きた恐怖の冤罪ミステリー35』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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「俺の情報で逮捕できれば減刑してもらえるから頼むぞ」
暴力団員Cは、前川さんの中学時代の1学年先輩で、日頃から前川さんを使い走りにするような間柄だった。
Cは面会に訪れた知人らに「殺人事件の犯人を知らないか。犯人がわかれば自分の刑が軽くなるかもしれない」などと情報提供を求めており、そこで前川さんの名が出ると、同棲相手の女性Dさん宛に「前川のことをよく思い出してくれ。俺の情報で逮捕できれば減刑してもらえるから頼むぞ」と手紙を出していた。
Cから「血の付いた前川を連れてきた」人物として名前の挙げられた後輩のEは犯人蔵匿の容疑で逮捕され10日余りで釈放されたが、Eの証言から、前川さんの送迎に使用されたのはシンナー仲間のFが人から借りて乗っていた白いスカイラインだったことがわかり、助手席ダッシュボード付近に血痕があったことが判明。
警察はこうした証言者たちの話を基に、事件の筋書きを以下のとおり組み立てる。
