それでも前川さんはあきらめず、2022年(令和4年)10月に再び名古屋高裁金沢支部に再審を請求。審理では改めて目撃証言、特に「事件当日に血の付いた服を着た前川さんを見た」という複数の証言の信用性が最大の争点となった。

 弁護側は警察が当初、「見え透いた嘘をついている」などと、証言の信用性に疑問を抱いていたことが、検察が新たに開示した捜査報告書によって明らかになったと主張。また2024年3月には、以前「服に血のついた前川さんを見た」と証言した1人(C?)が第二次請求審の証人尋問において「警察から自分の犯罪を立件しないことの引き換えに、前川さんの関与を認めるよう取り引きを持ちかけられ、嘘の証言をした」と供述した。

「良かったです。ただ、良かったで終わらせてはいけない」

 2024年10月23日、同支部は「捜査に行き詰まった捜査機関が誘導などの不当な働きかけを行い、関係者の供述が形成された疑いが払拭できない」として再審開始を認める決定を下す。検察が異議申し立てをしないことを発表したことで、2025年3月6日に同支部で再審開始。同年7月18日の判決公判で前川さんに無罪が言い渡される。

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無実を勝ち取った前川さん ©時事通信社

 この際、裁判長は「39年もの間、大変ご苦労をおかけし、申し訳なく思っています」と謝罪した。その後、検察が上告を断念したことで正式に無罪が確定。弁護団とともに記者会見に臨んだ前川さんは「良かったです。ただ、良かったで終わらせてはいけない」とコメントした。

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