当初、少年側と警察の見解は平行線だった。職務執行上の事故であり、故意に少年を負傷させる気はなかったと警察が発表する一方、少年は警官から故意に暴行を受けたとSNS上などで主張していた。

 沖縄県警は慎重に事故を捜査していたが、11月2日、少年への暴行に故意があったとして、重傷を負わせた警察官を特別公務員暴行陵虐致傷の疑いで書類送検。同時に県警本部長が謝罪した。

 1月の事故でなにがあったのか。少年の仲間たちがとった警察署への抗議の暴動の様子を含む、事件の真相を追った記事を再公開する。(初出:2022年1月28日 肩書・年齢は当時のまま)

ADVERTISEMENT

◆◆◆

「警察が少年への暴力を認めなかったら、前回以上に暴れてやる」

 1月28日深夜、沖縄警察署前で隊列を組み、歩道を封鎖する機動隊を睨みつけながら、少女が息巻いた。

暴動翌日の夜も沖縄署の前は機動隊が道路を封鎖していた ©文藝春秋 撮影:上田康太郎

 前日の1月27日深夜、沖縄署の前には数百人の若者が集まり、署に向かって投石したり、関係車両のフロントガラスを破壊するなどの暴動が起きていた。暴動のきっかけは、27日未明に起きた17歳の少年と警察官のトラブルとされる。

フロントガラスが割られた車両 読者提供
暴動後の県警沖縄署の外観 読者提供

 沖縄署は、市内の路上で暴走行為を取り締まっていた警察官が、バイクを運転していた少年に職務質問しようと制止を呼びかけたところ、警察官がバイクと接触し怪我を負ったと発表。また、少年は単独事故により怪我をしたとの認識を示し、地元メディアがこの件を報道した。

「まるで『東京卍リベンジャーズ』の世界観だった」

 しかし、その後「高校生が警察官に警棒で殴られた」「警察は事故として処理し、事実を隠蔽している」といった情報がSNSを通じて拡散され、少年の同級生らが警察署前に集結。一時は500人近い若者が集まったという。

 庁舎に向かって卵や石を投げたという少年は「怪我をした少年とは一緒にバイクで走ったことがある間柄。冗談もうまく、誰にでも気さくで人気者だった。知り合いはみんな『警棒で殴られて怪我をした』と言っていている。まずいことをしているという意識よりも怒りが込み上げた」と振り返る。

拡散された動画。少年の目からは血が流れていた

 別の少年も興奮気味に述懐する。

「怪我をした彼と面識はないが、知り合いに声を掛けられたので来た。高校生に限らず大人もいて、とにかく盛り上がっていた。コンビニで買った卵や氷、近くに落ちている石やのぼり旗、とにかく投げられるもの全て投げていた感じ。紙に火をつけて駐車場に投げ捨てる人もいた。まるで『東京卍リベンジャーズ』の世界観だった」

 この暴動を受け、沖縄県警警察署の前では28日も厳戒態勢が敷かれた。

©文藝春秋 撮影:上田康太郎

 午後9時ごろから続々と機動隊車両が集結。バリケードを設置して、機動隊が隊列を組み、署前の歩道を封鎖した。ただ、この日の夜は周辺に数十人ほど若者が集まったものの大きなトラブルは起きないまま、29日午前2時半ごろには警戒は解かれた。