12月12日、「アニメソングの帝王」こと歌手の水木一郎さんが肺がんのため亡くなっていたことがわかった。74歳だった。今年7月には、肺がんで闘病していることを公表していた。
1968年に「君にささげる僕の歌」でデビューした水木さんは、72年に放送が始まったロボットアニメ「マジンガーZ」のオープニングテーマで70万枚超の大ヒットを記録。サビの部分で「ゼーット!」と雄叫びをあげる「Zポーズ」も代名詞として定着した。しかし今年に入って、ロシアによるウクライナ侵攻支持の象徴として「Z」が浸透。その複雑な心境を「週刊文春」に明かしていた。当時の特集記事を特別に再公開する(初出:週刊文春 2022年4月7日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)。
◆◆◆
ロシアによるウクライナ侵攻支持の象徴として広がっている「Z」マーク。だが、日本で「Z」と言えば、あの男――。「アニメソング界の帝王」こと水木一郎(74)だ。
東京都世田谷区で4人兄弟の末っ子として生まれ、母親の好きなスタンダードジャズを子守唄に育った水木。68年に「君にささげる僕の歌」でデビューすると、アニメ・特撮の主題歌を次々に担当。72年に放送が始まったロボットアニメ「マジンガーZ」のオープニングテーマは70万枚超の大ヒットを記録した。
持ち歌は1200曲を超えるが、中でも「マジンガーZ」は水木が「名刺代わり」と公言する代表曲だ。サビの部分で宙にZの文字を描きながら「ゼーット!」と雄叫びをあげる「Zポーズ」も水木の代名詞として定着した。
今年は「マジンガーZ」の放送開始からちょうど50年。これまで同作の主題歌、挿入歌を大切に歌い続けてきた水木だが、ウクライナ侵攻によって「Z」が思わぬ形で汚されてしまった。ロシア軍の戦車には「Z」マークが記され、親ロシアの民衆が「Z」を記した看板を掲げるなど、侵攻を支持するシンボルとして広がったのだ。
これを受けてスイスの保険会社「チューリッヒ保険」は、ZURICHの頭文字である「Z」のロゴの、会員制交流サイト(SNS)での使用を取りやめた。水木も「Z」を自粛せざるを得なくなってしまうのか――。