「所属するにあたり、『強い相手とだけやりたい』というのが条件でした。長年ボクシング界にいますが、実際には強い相手とはやらずに『形だけ』のこともある。でも彼は違う。本当に強い相手としかやっていない」
こう明かすのは、井上尚弥(29)が所属する大橋ボクシングジムの大橋秀行会長である。
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大橋会長が井上と出会った中1の時の第一印象
12月13日、WBO世界バンタム級王者のポール・バトラーにKO勝ちし、史上9人目となる4団体王座統一を果たした井上。
「チケットは6月の3団体統一戦の5倍のスピードで予約が入り、最も高い22万円のチケットから売れ、即完売。ファイトマネーは、軽量級ファイターとしては破格の3億円超です」(スポーツ紙記者)
後に“モンスター”と呼ばれる井上がボクシングを始めたのは小学1年生の時。アマチュアボクサーの父・真吾さんの影響だった。
「当時はクラブ活動に近い感覚だったそうですが、日々のロードワークや腕立て伏せ、腹筋を欠かさなかった」(ボクシング記者)
恩師の大橋会長が、井上と出会った中1の時の第一印象を語る。
「もちろんパンチが強くて足も速い。ただ、それよりもオーラというか声色が、『将来、怪物になるのでは』と思わせました」
会長の予想通りに井上は成長を遂げた。高校3年時には、所属ジムの先輩で当時世界ミニマム級王者だった八重樫東をスパーリングで凌駕することもあった。
2012年6月のこと。井岡一翔戦の直前、八重樫が最後にスパーリングの相手としたのが井上だった。
「『八重樫が怪我すると困るから』という意図もあってそれまで尚弥とのスパーリングはやらせてなかった。でも、実戦を想定して1回だけ尚弥にスパーリングをお願いしたんです。すると採点結果では八重樫が負けてしまった」(同前)