文春オンライン

2003年の日本

「『毒がなくて面白くない』と散々言われましたね」それでもテツandトモ(52)が25年生き残れた「スゴい理由」

一発屋で終わらなかったの「なんでだろう」 #2

2023/02/05
note

トモ あと初期の頃は、ツッコミとしてテツの頭をはたくこともあったんです。でもある時、子供から「人の頭を叩いちゃダメなんだよ」と言われて、ハッとしました。「そうだよね、ごめんね」と謝って、以降は叩かないように心がけました。そういう路線が、もしかしたら安心感に繋がっているのかもしれません。

見向きもされなかった営業先で「学んだこと」

――営業に行ったけど、見向きもされなかったといったことも?

テツ あります、あります!

ADVERTISEMENT

トモ 立食パーティーなんかだと、もう全く相手にされない。30代のときは、そんな現場ばかりでした。

テツ 目の前で酒盛りが始まることもありましたよ(笑)。地獄です。

トモ 先輩方に相談しても「気にせず持ち時間やって帰ればいい」という返答が多かったのですが、それは絶対に嫌。僕たちを呼んでくださった人をがっかりさせたくないんです。

テツ 盛り上げるために呼んでいただいているんだから、それをやらないでどうすると。

トモ 辛かったのは、サプライズゲスト扱いが多いこと。そもそも誰も期待してないし、特にファンでもないわけです。何で僕たち呼んだんだろと思う時も正直ありましたが、そんな現場を盛り上げられたら最高だ!と考え直しました。「テツandトモを呼んで良かった」と思ってもらいたい一心で挑みましたね。

――むしろ腕の見せ所だと。そういった人たちを振り向かせるために、工夫したことはありますか?

トモ 最初は、とにかく大声を出していました。でも、そうしたらみんな僕たち以上に大きな声で喋るから、会場がうるさくなるだけ(笑)。それで、テツがアゴに企業さんにまつわるものを乗せるという芸を思いつきました。

 ちくわの会社では、ちくわの大きいオブジェをお借りして、「さあ今日はこのちくわが顎の上に載るのか!?」とだけ声を張る。そうしたらお客さんの視線が集まったんです。今までやっていたことと真逆で、黙ったら見てくれました。 

クールポコ。さんにお借りした杵をアゴに載せるテツさん (画像:テツandトモ公式YouTubeより)

テツ それまではステージの上から一方的にネタを披露して、楽しんでもらうことばかりに頭を捉われていました。でも、営業では根本的に「喜んで」もらわなきゃいけないんですよね。

 そのためにはまず自分をさらけ出して、みなさんのほうにもっと近寄らなければいけない。僕は大道芸が好きなんですが、あの場って一体感がすごいんですよ。芸だけじゃなく、お客さんが寄り添ってくださることでも引力が生まれるわけです。

 そのことに気づいてからは、僕も頑張るから一緒にいる時間と空間をみんなで楽しみましょうよというスタンスに変わりました。それは、今もポリシーにしていますね。