それでも「スシロー」「はま寿司」の2社が揃って厳しい対応を見せたことには、お金では解決できない理由があるためだ。
「『回転寿司は衛生面で不安だよね』という悪いイメージを払拭して世間に納得してもらうために、厳しい姿勢をとる必要があったのだと思います。全国チェーン店はお客さんに個別に説明して回ることもできないので、企業の衛生観念やモラルを示そうというわけです。加えて、模倣犯を生まないための“見せしめ”という側面もあると思います。店側は金銭的な意味がないと分かっていてもやらざるを得ないし、客側も払えない上に、このような不法行為では破産しても免責されない可能性が高い。泥沼です」
「数年後に似たような事例が起きる可能性は残念ながら高い」
先述したバイトテロは2013年頃と2018年頃に“流行”し、そのたびに社会問題となった。TwitterやTikTokのようなSNS上で飲食店でのイタズラ動画は、4~5年の周期で問題になっていることになる。石崎氏はこの「4~5年」という期間には理由があるという
「迷惑行為を起こしたアルバイトの多くは大学生でした。そのため、一度社会問題になっても、およそ4年で全員が入れ替わってしまいます。事件直後は社会問題として広く注意喚起されても、4~5年も経てば事件当時は小学生や中学生だった子どもたちが社会に出てきます。彼らは事件の記憶など持っていません。
それは“迷惑客”の場合でも同じで、しばらくは『調子に乗ると訴えられる』という意識が持続しても、数年後に似たような事例が起きる可能性は残念ながら高いと思います」
SNSで投稿・拡散され、広がりを見せる今回の“回転寿司テロ”。しかし石崎氏は、「迷惑行為自体は昔からあったことで、SNSのせいというよりはもっと根深い問題」と指摘する。
「迷惑行為に及ぶ人のほとんどはバズや収益化を狙っているわけでもなく、『仲間にウケたい』というごく単純な動機で動いています。もちろん、このような迷惑行為自体なくすべきなのは間違いありませんが、それは犯罪がなくなった方がいいというのと同じレベルの話かもしれません。今回は若い男性が目立っていますが、拡散された動画の中にはレーンのお寿司を高齢者がつまみ食いするものもありましたし、女性の迷惑客ももちろん存在します。SNSによって影響が広がりやすくなったのは事実ですが、もっと根本的に飲食業界全体の問題として考える必要があるんです」