「事件について息子と話したんだけど、息子は印象に残ってないと言うのよね。昔から悪さをしていたら覚えているだろうから、そんな大それたことをするような子じゃないんじゃないかって……。
それに倉光さんのご両親はしっかりしていて、朗らかな人たちなのよ。ただ、お母さんが病気になり一時期入院していて、病気を煩いながら息子さんの身の回りのことをやっていらしたから、ご苦労はあったでしょうね。倉光さん自身は、家族以外とあまりお付き合いがないんじゃないかしら」
「引きこもりのなか図書館通い」倉光容疑者を支えた「本」
そんな倉光容疑者が心の支えとしていたのが、「本だったのではないか」と別の近隣住民はみている。
「倉光容疑者は仕事をしていないと聞いていたから、自転車でいつもどこに出かけているかお母さんに聞いたことがあったのよ。そしたら、『図書館によく行っている』って。図書館に行かないときは、家の2階で本を読んでいると話していたの」
その中の一冊に『おどろきの中国』があったのだろう。宮台さんはこの本の中で幸せについて、こう触れている。
《よく知られている調査データに、次のようなものがあります。「幸せにいきられるかどうかは自分次第なのか、社会の秩序が必要なのか」を問うと、日本以外の国、アメリカもヨーロッパも中国も、6~7%しか「自分次第」という人が出てこないんだけど、日本では「自分次第」という人がだいたい35%いるんですよ。(中略)われわれほど自己決定的でない存在はおらず、われわれほど依存的な存在もいないような気がします》
本好きで物好きな男は、人と関わりのない孤独な状況が、「自分次第」であるがゆえに負い目を感じていたのだろうか。
インターネット上では、宮台さんの孤独な引きこもり男性を批判するような発言について取り上げられている。宮台さんは、ニコニコ動画のコメントを取り上げ、「友達いないだろう」「ひとり寂しく死ね」などと発言していたこともあったという。
倉光容疑者は一体なぜ宮台さんに狂気を向けることになったのか。自死してしまった今、彼の口から真相が明かされることはない。
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