今から約3年前、日本人の男がノルウェー人の女性を殺害した容疑で国際手配されるというニュースが駆け巡った。
男の名前は「オグ・ヒロユキ」。2020年1月に交際相手のノルウェー人女性ネリド・ホイネスさん(当時30)を殺害した容疑でラオス警察に追われ、逃亡の末、翌年11月に逮捕された。
国際手配され、逃亡の末に逮捕された日本人の男は一体なぜラオスで交際相手を殺すに至ったのか――。ノルウェーに住むネリドさんの母親エレンさんが文春オンラインの取材に応じ、涙ながらに事件について語った。
むごい殺され方
「ネリドは私の一人娘でした。ネリドが幼いころに私は夫と離婚したので、それ以来私たちは2人で暮らしてきました。母と娘であり、親友でもあり、とても仲がよかったと思います。私がアリを踏んでしまったり、ハエを叩こうとしたりすると、『お母さん、やめて』とよくたしなめられました。すべての生き物を大切にするような心の優しい子だったんです。そんな子が、悪魔みたいな男に殺されなければならないなんて……」
娘の死後、エレンさんは仕事が手につかず、今は職場を離れ、家族や友人の支援を受けながら生活しているという。エレンさんは続ける。
「ネリドが亡くなってから、必死で事件について調べました。オグという日本人の男が何者なのか、なぜ娘は殺されなければならなかったのか。オグが逃亡中には複数の人たちから彼に関する情報提供があり、彼の残忍さが見えてきました。逮捕後、ラオス警察の捜査報告書を読み、娘がむごい殺され方をしたことを知り、怒りを感じています」
エレンさんによると、ラオスの捜査機関から書類で次のように報告を受けたという。
<2019年にタイのパンガン島でネリド・ホイネスとオグ・ヒロユキが出会い、2人は交際を始めた。
翌年の1月8日、2人はラオスに入国し、10日にヴァンヴィエン(ラオス中部の町)のゲストハウスにチェックインした。
1月14日、オグはネリドの頭部を数回殴打し、倒れたところを数回蹴るなどの暴行を加えた上、絞殺した。
翌15日、オグはネリドの死亡を確認するも警察や病院に通報しなかった。
1月19日、竹の棒にくくりつけた遺体をバイクの後部に載せ、ジャングルに遺体を遺棄した。>
ネリドさんの遺体が発見されたのはそれから3日後のこと。国際指名手配を経てラオス当局に逮捕されたオグは容疑を認めているという。
ある時から様子がおかしくなって…
ネリドさんにはヨガのインストラクターになるという夢があった。親元を離れ、タイのパンガン島でヨガ講師のアシスタントとして働き始めたのは2019年の秋だった。
「タイにいるネリドとは、1週間に何回も電話したりメールをしたりしていました。ネリドは楽しそうに生活しているように見えましたが、ある時から彼女の様子がおかしくなっていったのです。日本人の男性と恋に落ちたと私に伝えるや、いきなり『結婚する』と言い出したのです。驚いて問いただしたら、付き合い始めてまだ2週間だと言うので『さすがに早すぎるんじゃないの?』と止めたのを覚えています」