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保護者会は怒号飛び交う修羅場に

 こういった学校側の対応は問題ではなかったのか。取材班は「イジメはなかった。彼女の中には以前から死にたいって気持ちがあったんだと思います」旭川14歳女子凍死 中学校長を直撃で当時の校長への直撃取材を試みた。 

イジメがあった公園 ©文藝春秋
イジメがあった公園 ©文藝春秋

 爽彩さんがイジメにあっていた学校の当時の元校長を取材班は直撃した。校長は2時間にわたって取材に応じた。

 元校長は「いたたまれない」と爽彩さんの死を悼む発言はあったものの、イジメがあったという事実は「そこまで至っていない」と一貫して認めなかった。あくまで加害生徒たちの行動を「トラブル」と称し、それに対しては指導を行ってきたと主張した。

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 元校長は取材の中で「子供は失敗する存在です。そうやって成長していくんだし、それをしっかり乗り越えてかなきゃいけない」と語ったが、爽彩さんの母親は「警察に犯罪行為と認められてもイジメじゃないとまともに取り合ってくれないのなら、親はどうすればよいのか」と肩を落としていた。

 一連のイジメ報道は大きな反響を呼んだ。そして、報道から11日後についに開かれた保護者説明会の様子を「ふざけんな」「おぞましい」旭川少女イジメ凍死 ついに「臨時保護者会」開催も怒号飛び交う90分に《教育委員会は「重大事態」認定》で詳報した。

保護者会が行われたY中学校の体育館 ©️文藝春秋
保護者会が行われたY中学校の体育館 ©️文藝春秋

 爽彩さんが通っていた中学校は一貫してイジメの事実を認めようとしなかった。しかし、報道から1週間後、ようやく旭川市はイジメの再調査に乗り出すことを発表した。その直後に行われた中学校での保護者説明会では爆破予告もされ、パトカーも出動する異例の事態となった。

 質疑応答では学校側の煮え切らない回答に保護者側の質問もヒートアップしていった。

「文春オンラインの記事の内容を見て僕は涙が出た。この学校に子供を通わす親として、本当に大丈夫なのかと。それに事件に関して何の説明もない。(中略)あのおぞましい行為をイジメじゃなかったと判断している学校。この中途半端な説明会でどれだけみんなが納得すると思いますか」

 ある保護者はこう怒りをあらわにした。保護者の中には学校の態度に怒り、途中退席するものも大勢現れ、次第に怒号が飛び交う事態となった。結局、爽彩さんの担任だった教員や教頭は一度も頭を下げることは無かったという。

 この保護者説明会の翌月、旭川市は第三者委員会を設立し、爽彩さんが受けていたイジメについて調査を開始した。しかし、発足から1年4か月も経ってようやく提出された調査報告書は遺族にとって到底納得できるものではなかった。遺族側は強く反発し、旭川市は新たな第三者委員会を立ち上げ、再調査を始めている。一日でも早く、爽彩さんの無念が晴れることを願わずにはいられない。