3月16日、ワールド・ベースボール・クラシック(以下WBC)準々決勝で、侍ジャパンはイタリアを9対3で下し、準決勝進出を果たした。

 代表史上初の4強入りを目指したイタリアは、日本代表先発の大谷翔平を4回2/3で降板させ、3番ライトのドミニク・フレッチャーが本塁打を含む3安打など気を吐いたが、効果的に点を重ねた日本に突き放され力負けした。試合会場の東京ドームには、ジャンルイジ・ベネデッティ在日イタリア大使や来日中のグイド・クロセット防衛相が応援に駆けつけたが、番狂わせはならなかった。

©️時事通信社

 イタリア代表監督は、かつてLAドジャーズで野茂英雄とバッテリーを組んだマイク・ピアザだった。

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 試合前日会見で「オオタニと対戦できることは一生に一度の幸運。最大限にミスを減らし、いいリズムでプレーを進められれば我々にもチャンスはある」と闘志を見せていた同監督だが、油断することなく追加点を奪いながら継投を重ね、クレバーに勝ちを手繰り寄せた日本にピアザも脱帽するしかなかった。

イタリアはサッカー大国と同時に“欧州の野球大国”でもある

 イタリアといえばサッカー大国。だが、実は第二次大戦中に上陸した連合国軍、つまり米兵によってベースボールが広まり、戦後間もない1948年には全国1部リーグ「セリエA」が発足、現在も長靴の国の津々浦々で試合が行われている。

 代表チームの初結成は71年前に遡り、1954年から始まった欧州選手権で計10度の優勝を誇る“欧州の野球大国”イタリアでは、現在に至るまで連綿とベースボール文化が息づいているのだ。

 ただし、人気や知名度ではサッカーを始めとする他の競技に著しく劣る。

 イタリア本国でWBCの地上波中継はなし。台湾でのプールA最終節で決めた2大会ぶりの準々決勝進出の快挙も報じるメディアはほぼ皆無。同国最大のスポーツ紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』翌日紙面では、1面から33面までサッカー記事が続いた後、自転車、バスケ、モータースポーツ、スキー、バレー、競馬ときて、ようやく44頁目に10×13センチ大の小さな囲み記事のみといった扱いだ。

 

 国内競技人口は野球とソフトボール合わせても5万人いくかどうかという普及レベルで、統括団体FIBS(イタリア野球ソフトボール連盟)も2競技で統合されているほどだ。

 それでも、イタリアの野球人たちには、不毛の地と見なされているヨーロッパ大陸で野球文化を長年育んできた心意気があり、また球聖ジョー・ディマジオや現代表監督ピアザといったメジャーリーグの伝説的選手をアメリカへ渡った同胞移民たちが輩出したという誇りもある。ピアザ監督は、今大会のイタリア代表ほぼ全員を北米出身者で固めた。イタリアの野球スタイルは競技のルーツであるアメリカと直結している。

 だが、21世紀の選手たちや指導者たちの中には、地球上にあるもう一つの野球大国“ジャッポーネ(日本)”に対し、特別な敬意を抱く者が多い。