イタリアの野球人が口々に賞賛する日本の野球スタイル
日本戦に9番三塁で先発したデービッド・フレッチャーは、大谷とエンゼルスで特に仲の良いチームメイトだ。対戦を前に「ショウヘイと東京ドームで戦えるなんて最高だよ。こんな大勝負は人生でそう何度もない。日本には彼以外にも多くの才能ある選手がいてハイレベル・プレーヤー揃いだ」と連盟HPで明かしていた。親友と檜舞台での大勝負という喜びを抑えきれなかった様子だ。
07年から17年まで代表チームを率い、10年と12年の欧州選手権を連覇したイタリア球界きっての名将マルコ・マッツィエリ(60歳)は、日本野球を敬愛しているといっていい。WBCでも09年・13年・17年大会で采配を振るった同監督は、日本野球への印象をこう語る。
「私が現役だった80~90年代から指導者に転向した後も、国際トーナメントで日本と対戦するたびに衝撃を受けてきたものだよ。私が日本の選手たちを見て何より驚くのは、チームの全員が同時に同じ練習メニューの同じ動作を同じリズムで正確に反復できることだ。代表のみならず、どんなレベルでもそれができる」
もし、これに“ロボットのようだ”と続けば欧米流の嫌味か皮肉に他ならない。だが、あくまで国際的野球指導者としての観点から、マッツィエリ元監督は日本野球だけにしかないストロングポイントを列挙した。
「何人であろうと集団になったときの整然とした統制ぶり。一つ一つの所作にムダを削ぎ落とした美しいフォーム。完璧を追究して止まない姿勢を持つ者が、1人や2人ではなくチーム全体を構成するところ」
常日頃から脳裏にあるのか、一気に述べた元監督は言外に“つまり、これらはどんなに望んでも我々の文化圏では実現不可能なのだ”と言っているようだった。国境や言葉のちがいを超えた真の野球人らしく、イタリア球界のレジェンドは深く息をついて付け加えた。
「日本チームのプレーは、心の中に静かな興奮を呼び起こしてくれるんだ」
取材時に同席していた代表コーチが「監督は国際大会から帰国するたびに『日本こそ理想のチームだ!』ってまくし立てるんです」と苦笑していたのが忘れられない。