あの美しいセンター前ヒットを、甲子園で見たい
しかし、プロ2年目以降、髙山は長く、暗いトンネルに迷い込む。プロ7年間を終えた現時点で、ルーキーイヤーの数字がキャリアハイ。2021年にプロ入り後初めて開幕一軍を逃すと、昨季、そして今季と3年連続でシーズン開幕を二軍で迎えることになる。
崖っぷち――。そんな言葉が囁かれているのも事実だ。チームの外野レギュラー候補には、近本光司やルーキーの森下翔太といった後輩が名を連ねる。井上広大、前川右京といった伸び盛りの若手も控えている。新外国人のノイジーも加えると外野争いはし烈を極める。
今年30歳を迎える髙山がレギュラーを獲るためには、そんなライバルたちを黙らせるだけの結果が求められる。
おそらく、いや、間違いなく、7年前の秋に語ってくれた「理想のバッティング」は今も体現できていないのだろう。髙山が今も、その理想像を追い求め続けているかは分からない。
ただ、なぜだろう。あの輝きを知っているからなのか、「髙山俊は、こんなもんじゃない」という“意地”にも似た感情が、今も心の中に残っている。
あの美しいセンター前ヒットを、甲子園で見たい――。
そう願っているファンは、私だけではないはずだ。
2023年、確かに開幕一軍の座は逃した。ただ、シーズンはこれから始まる。まだ、142試合残っている。「理想のバッティング」に少しでも近づき、ふたたび甲子園で躍動する髙山の姿を、必ず見られるはずだ。
まずは開幕戦。髙山がいないのは確かに寂しいが、気持ちを切り替えて阪神タイガースの勝利を願いたいと思う。
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