「所持金1万円、50歳のAさんは死ぬまでに1兆円を手に入れられる?」
そんなバカな、と思うだろうか。じつは、このクイズには本当に優良な企業を見抜くための、たった2つのポイントが隠されている。
「企業がいかに稼いでいるのか」「上手に商売をしていることを調べるにはどの数字を見ればよいのか」、あるいは「投資家や株主は決算書のどの数字に注目しているのか」……誰もが知りたい良い会社を見抜く方法を、ソフトバンクやヤマト運輸、三越伊勢丹、ZOZOTOWNなど話題の企業の事例を見ながら紹介した『やっぱり会計士は見た!』著者の公認会計士・前川修満さんがこのクイズを解説する。決算書の数字は「企業の真実」を雄弁に物語る――。
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突然ですが、次のクイズに答えてください。
【問題】
あるところに、Aさんという50歳の男性がいました。
2018年の元旦の時点で、Aさんの所持金は1万円でした。
Aさんは、自分の所持金(1万円)をなんとか増やしたいと思っています。
そこで彼は2018年1月1日の朝、市場に行き、その所持金1万円で品物の仕入れを行い、その日のうちに20%のマージン(利幅)をつけて1万2000円でこれらをすべて売り切り、代金の回収もすべて行いました。
翌日の1月2日、Aさんは前日稼いだ1万2000円をもって市場に行き、その1万2000円で仕入れを行い、やはりその日のうちに20%のマージンをつけて、すべてこれらを売り切って代金を回収し、1万4400円を手にしました。
こうしてAさんは毎日、前日の売上をすべて仕入れに回し、その日のうちに20%のマージンをつけて売り切り、代金もすべて全額回収します。
彼は元の所持金1万円を少しずつ増やし、1兆円(!)に達するレベルにまでしたいと考えています。さて、もしそんなことが可能だとしたら、Aさんの所持金が1兆円になったとき、彼は何歳になっているでしょうか(ここでは問題を単純化するために、Aさんの生活費や所得税などは無視します)。
【答え】
Aさんには申し訳ない言い方になりますが、50歳で所持金が1万円というのは、はっきり言って貧しいでしょう。そのAさんが、このスキームに則って、所持金を1兆円にまで増やすのは一見、途方もないことかもしれません。
しかしながら、結論を言うと、1月1日から商売をはじめたAさんの所持金は、なんと2018年4月12日には、1兆円を超えます。
これを意外に思う方も多いのではないでしょうか。
次ページの表で説明します。
最初の13日で1万円は早くも10万円を超えます。ということは大雑把に言うと、13日でお金の桁がひとつ上がるということです。そうであれば、その10万円も次の13日が過ぎたら、やはり桁がひとつ上がって100万円を超えます。
1兆円というのは、1万円よりも桁が8つ大きいので、単純計算だと13日×8桁=104日経てば、Aさんの所持金は1兆円を超えてしまうのです。