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挫折を経験して吸収した「3つの教え」

 卒業後は岩手県の富士大学に進学。大学リーグで打点王を獲得するなど活躍を見せ、2年時の2011年には日米大学野球の日本代表に選出された。だが、第一戦こそ満塁ホームランを放つ活躍をみせたものの、その後は凡退。伸び悩む山川を翌年、アジア選手権の日本代表に抜擢したのが当時の監督・小島啓民氏だった。

「バッティングを見たとき、打球の速さに度肝を抜かれました。これは必ず大成すると思った。彼のレベルならセンターに打つ意識さえあれば、左手1本でもホームランにできる。合宿では、バックスクリーンに5本打ち込むまで終われないという“意識改革”をやりました」

©️佐貫直哉/文藝春秋

 加えて、ある部分にもテコ入れをしたという。

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「バッティングこそピカイチでしたが、他の部分は日本代表の水準に届いていない印象を受けました。沖縄の野球は、綿密なチームプレーより個の力を重視する傾向にある。守備や連係プレーを徹底して教えたこの時の合宿で、彼の野球の基礎が固まったように思います」(同前)

 “食トレ”“肉体改造”“意識改革”の3つの教えを吸収し切った山川は2018年に本塁打王、ベストナイン、MVPを獲得。昨シーズンは打撃二冠を達成した。WBCでの活躍に大きな期待がかかる教え子に小島氏がエールを送る。

「世界大会は1点の重要性が桁違いに大きい。日本の中軸にはチャンスで決めきる力が必要です。そのプレッシャーは代表を経験した者にしか分かりませんが、彼はその重みをよく知っています。打者は『顔』で打つものと言いますが、最近の彼は打席で自信を感じさせる良い顔をしている。大会が本当に楽しみです」

 日本の初戦は3月9日の中国戦。山川の幸先よい祝砲が期待される。

山川穂高 Hotaka Yamakawa 1991年11月23日、沖縄県生まれ。2014年ドラフト2位で埼玉西武ライオンズに入団。19年には、四番としてパ・リーグ連覇に貢献。昨季、日本人選手最速で通算200号本塁打を達成した