忘れられないWBCのあの雄叫びガッツポーズ
今回は自己紹介なのでイチ推しの伊藤大海投手の話をさせてください。伊藤大海投手といえば、WBCのあの雄叫びガッツポーズが忘れられません。決勝の対アメリカ戦。6回に4番手で登板した伊藤投手は、6番のターナー選手をレフトフライに打ち取り、その後、リアルミュート選手をサードゴロに打ち取ります。リアルミュート選手へは、声を出した投球もあり、テレビ越しでもその気迫が伝わってきました。そして最後はマリンズ選手を、直球で空振り三振。雄叫びを上げて、右拳で力強くガッツポーズでした。
伊藤投手は今回のWBCで、1次リーグの中国戦、準々決勝のイタリア戦、決勝のアメリカ戦の3試合に登板し、無安打無失点の素晴らしい投球を見せてくれました。プレッシャーがかかればかかる場面ほど完璧な投球で、特に決勝は完全アウェーな空間の中、ピシャリと3人で抑えたのは圧巻です。侍ジャパンの試合で、自分の応援しているチームの選手が出ると、自分の「家族」が出ているような気持ちになって、より一層、緊張感が高まって、心臓が飛び出そうになることがよくあります。ただ、今回のWBCでは伊藤投手が登板すると、どんなに緊迫した場面でも、なぜか「よし、大丈夫だ」と思える自分がいて、もはや即効性のある安定剤となっていました。
侍ジャパンの栗山監督は「信頼できる人」について話すとき、「知者は惑わず、仁者は憂(うれ)えず、勇者は懼(おそ)れず」という『論語』の言葉を用いたことがあります。「知恵のある者は、事を成すにあたって迷いがない。徳のある者は何事にも心配することがない。真の勇気がある者は、恐れることがない」ということです。いつもとは違う、中継ぎでの登板を任されていた伊藤投手ですが、国際大会に強く、さらにマウンド上でも普段通りの動じない姿に、栗山監督は絶大な信頼を寄せていたのかもしれません。
今年もすでにプロ野球が開幕しましたが、昨年と変わったことの一つに「声出し応援の解禁」があります。ここ数年、コロナ禍で制限があったため、伊藤投手にとっては初めての声出し応援です。他球団の大声援も脅威ですが、伊藤投手は自分のペースで投げ切ってくれることでしょう。開幕後初先発の4月5日ロッテ戦は、5回94球を投じるものの、勝ち星はつきませんでした。ただ、無失点の好投で、今シーズンは何回ガッツポーズを見ることができるのか、今から楽しみで仕方ありません。ファンの声出し応援が少しでも選手の皆さんの力になればいいなという思いで、私も球場に足を運びたいと思います。
追記 19日、伊藤大海選手は今シーズン3回目の登板でしたが、またしても初勝利にはなりませんでした。ただ、止まない雨はありません。どんより雲は広がっていても、必ず光は射します。勝利を信じて応援を続けます。
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