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陸自ヘリ墜落事故で考える、現代戦に求められる戦闘ヘリの条件

このままでは自衛隊から戦闘ヘリが消滅する

2018/02/14
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現代の戦場で生き残れるか

 戦闘ヘリ、対戦車ヘリ、攻撃ヘリ……。呼び方はなんでもいいが、とにかくミサイルや機関砲で武装したヘリコプターについて、皆さんはどうイメージされるだろうか? 「強力」、「俊敏」、「格好良い」といったイメージを漠然と持たれている方も多いかもしれない。実際、湾岸戦争で500両以上の戦車を撃破するなど、AH-64は特筆すべき活躍を見せている。

 ところが、湾岸戦争の続きとも言える2003年のイラク戦争では、戦闘ヘリは大きな損害を出している。イラク軍のメディナ師団攻撃に向かった30機のAH-64Dのうち、同師団の猛烈な対空攻撃を受けて1機が不時着。残る29機中28機が損傷するという大打撃を受けている。現代的な軍隊と対峙した際、戦闘ヘリがいかに脆弱な存在かを物語っている。

 また、携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)といった、高性能の対空兵器が非国家主体にも拡散している現状がある。戦闘ヘリとMANPADSと言えば、ソ連のアフガニスタン侵攻の際、ソ連に抵抗するムジャヒディンにアメリカが供与したMANPADSのスティンガーミサイルにより、ソ連の戦闘ヘリが大きな損害を出したという逸話が様々なメディアで語られることがある。このエピソードは実際以上に大きく語られ、ソ連軍は言われているほどスティンガーによる損害を出していないことが近年明らかになっているが、それでもアフガニスタンでのソ連軍のヘリ活動に大きな制約が出ている。

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 現代の軍隊が配備する対空ミサイルの中で、最も小型で古いモデルのMANPADSであるスティンガーでこれなのだから、「もっと大型で高性能の対空ミサイルを持つ部隊に直面した際、戦闘ヘリに出番はあるのだろうか?」、「正規軍同士が戦う戦場で、戦闘ヘリは生き残れるのだろうか?」と疑問視されている。

潰しが効かないが故の不評と評価

 航空機による攻撃にも様々な種類があるが、一般にイメージされる航空攻撃は近接航空支援(CAS)だろう。CASとは、前線で戦う地上部隊を支援する目的で、敵部隊に対して空から攻撃を行うもので、戦闘ヘリもこのCASを行う航空機に分類される。

 しかし、CASを行う航空機はその特性上、敵の機関銃弾が届くような近距離を飛行する。必然的に対空ミサイルから銃弾まで、様々な脅威に晒されることになるため、それに備えた対策が必要となる。そのため、CAS専用に開発されたアメリカ空軍のA-10攻撃機は、「バスタブ」と呼ばれるチタン合金製の厚い装甲でコックピットを守り、高い生存性を確保している。ところが、ここまで徹底した防護策は重量増を招くため、積載量に余裕のないヘリコプターでは難しい。

A-10攻撃機(米空軍サイトより)

 また、軍事費の削減圧力が強い国は多い。そのため、少しでも節減しようと、航空機にマルチロール(多用途)性を持たせようとする傾向が強い。つまり、1機でなんでもできる万能選手が好まれている。ところが、CAS専用に開発された戦闘ヘリはこれが弱い。

 一方で、同じくCAS専用に40年以上前に開発されたA-10はアメリカ陸軍の信頼をガッチリと掴んで放さない。運用者であるアメリカ空軍は、潰しが効かないA-10を何度も退役させようとしてきたが、その度に陸軍からの反発にあって断念している。F-16戦闘機のような多目的に使える機体は、CAS以外の任務に引っ張られてしまうことがあるが、CASにしか使えないA-10は他に取られることもなく、陸軍部隊を助けてくれる。陸軍にとってかけがえのない味方なのだ。

A-10攻撃機(米空軍サイトより)