聞こえない親を持つ聞こえる子ども、コーダ(Children Of Deaf Adults)を主人公にした小説『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(文春文庫)が、草彅剛さん主演で、2023年冬にNHKで総合・BS4Kドラマ化されることが決まりました。著者の丸山正樹さんは「『ろう者役はろう者俳優で』という当事者たちの長年の夢を実現できたこと、関係者の皆さんに心より感謝いたします」とコメントを寄せています。

 ドラマ化を記念して、丸山正樹さんと、自身がコーダであり、ろう者の両親のことを描いたドキュメンタリー映画『きらめく拍手の音』のイギル・ボラ監督の対談を再公開します。(初出:2017/06/13。#2#3を読む)

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『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(丸山 正樹 著)

不思議な縁がつながって

丸山 ボラさんと会うのは今日が4回目になりますね。初めてお会いしたのは『きらめく拍手の音』の試写会場ですけど、ボラさんが『デフ・ヴォイス』を読んでくれているのは、今年の3月に韓国で出版された同作ハングル版の宣伝サイトにコメントが載っていたのを見て、知っていたんですよ。だから私の方は、映画はもちろん、ボラさんと是非お話ししたいと思っていたんです。

ボラ 私の方も丸山さんには是非お会いしたいと思っていて、配給・宣伝会社の方に連絡をとってほしいと頼んでいました。

丸山 ええ、そんな風に聞いてはいたんですが、正直言うと社交辞令だと思っていました(笑)。それが、紹介されて会った瞬間ハグされて。距離は一気に縮まりました。

ボラ ハグしました? 全然覚えていません(笑)。

丸山 あれ、私の思い違いですか? そんなことはないと思うんですが(笑)。

 映画はとても良かったです。全体を通して、ご両親の人物像がとても明るく楽しく描けていて、バイタリティにあふれている。辛いことを話していてもそう見えない。カラオケのシーンにそれが象徴されていましたね。弟さんが画面の隅っこの方で(笑)、手話で歌詞を追っているのも良かった。

ボラ ありがとうございます。

丸山 映画についてはまた後で詳しく感想をお話ししますね。

 ボラさんとはその後も2回ほど会う機会があったのですが、そこで初めて、ボラさんが『デフ・ヴォイス』ハングル版の「解説」を書いてくれていることを知ったんです。びっくりしました。それまで誰も教えてくれなかったんですよ! 私はもちろんハングルを読めませんし。それで、その解説を、友人で今回も通訳・翻訳を担当してくれている矢澤浩子さんに翻訳してもらって、読んだらもう、本当に感激しました。ボラさんが私に会いたいと言ってくれていたのは社交辞令ではなかったんだと分かりました。

映画公開に合わせて来日したイギル・ボラ監督(左)と丸山正樹さん。高円寺の写真BAR「白&黒」にて。