春季キャンプの“オレンジモンスター”
こんなこともありました。2022年の春季キャンプ。沖縄の球場で取材していたら、球団スタッフの方が私に「アデさん、次の休養日は時間ありますか?」と言われました。
内容をうかがうと、中田翔選手が加わったため1989年度生まれの同級生の対談をGIANTS TVで収録したいとのことでした。参加選手は菅野投手、丸選手、中田選手と豪華な顔ぶれです。
当日は着替える場所がないとのことでしたので、いつものジャイアンツのTシャツにオレンジジャケットをまとい、フル装備でホテルに向かいました。
ホテルに到着。球団フロアが何階かわからないので、フロントで聞くことにしました。女性スタッフの方に私は「すみません。ジャイアンツは何階ですか?」と尋ねると……。
急に空気が変わります。
少し険しい表情で、「お客様。そのようなご案内は致しかねます」。
私が「今日インタビューの収録がありますよね?」と尋ねても、スタッフの方は「申し訳ありません。存じ上げません」とかたくなに教えていただけません。
私は気づきました。
この格好を見て、ホテルの方は「かなりヤバめのオレンジモンスターが来た!」と思っているのだと。
それもそのはずです。見たこともないオレンジジャケットを着た、声の大きい元気なおじさんが「ジャイアンツは何階ですか?」……って、教えるはずがありません。
球団の方に電話をしてもつながりません。私はホテルの方に丁寧に説明しました。そうしたら、ホテルの方はこう言いました。
「私がご同行する形でしたら、ご案内させていただきます」
まだ半信半疑です。
エレベーターの中で私は「この格好は驚きますよね?」と聞くと、スタッフの方は「はい」と一言。
球団フロアに到着して、球団の方に電話します。つながりました。ようやくホテルの方もホッとした表情でした。
そして、この状況を知らない球団スタッフが合流して放った一言が、場外ホームラン級でした。
「ちょっとぉ、関係者以外立ち入り禁止だから!」
今、一番笑えない言葉です。ホテルの方の表情が驚きに変わります。
でも、すぐに冗談とわかって笑いが起こりました。
その後、無事に豪華選手の対談が行われ大盛り上がりで終わりました。ご覧になってない方は、ぜひGIANTS TVをチェックしてみてください。
エースが差し出した右手の意味
今シーズンの菅野投手の状態を心配されたファンの方は多いと思います。4月上旬、ジャイアンツ球場のスタジアムMC担当のためうかがうと、ライトのブルペンに菅野投手の姿がありました。
私はエースの状態がどうなのか心配でした。そんな私の表情を見てなのか、投げ終わった菅野投手は明るい表情で「アデさん!」と手を振ってくれて、「万全な状態で戻るからね!」と心配な気持ちを晴らしてくれました。
私が「待っています! 頑張ってください」と言うと、菅野投手は一言、
「大丈夫!」
何度も耳にしたエースの「大丈夫!」。この言葉にはエースの覚悟を感じます。
その覚悟が形になったのは、6月11日・交流戦の福岡ソフトバンクホークス戦でした。菅野投手の開幕戦です。
投手陣、野手陣、ファンを含め“オールジャイアンツ”でつかみ取った勝利! 感動しました!
翌週、東京ドームに戻ってきた菅野投手に、おめでとうを伝えたい。試合前練習の投手陣は、センター付近で練習をします。一番近いライトフェンス近くのエキサイトシートにポツンと一人で私は熱視線です!
練習終わり、球団職員の方のおかげで私に気づいたエースが来てくれました。
私はうれしくて大きく手を叩き、「勝利おめでとうございます! 福岡は行けませんでしたけど、大応援でした!」と伝えました。
すると菅野投手から「アデさん、ありがとう!」の言葉とともに、なんと右手が私の前に! 勝利の喜びを分かち合う握手になりました。これは、菅野投手が私を通して全ジャイアンツファンに伝えたかった感謝の思いだったのでしょう。
私が「次の登板も期待しています」と伝えると、菅野投手は「次はもっといい投球ができるようにする!」と次戦への闘魂を口にしました。
その後ろ姿を見ながら、私は心の中で「大丈夫! ジャイアンツファンは全力応援です!」と叫びました。
さぁ! 熱き思いのエースを心燃やす大応援で支えましょう!
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