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女子大生は舌を抜かれ、放射能まみれで死んでいた…男女9人が変死体で見つかった「不可解な遭難事件」の真相

source : 提携メディア

genre : ライフ, 国際, 読書

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ただの偶然かもしれないが、学生の1人は核物理学を専攻しており、原子力関連の研究室に在籍したこともある。ただし放射能が検出されたのは彼の服からではない。

どこか胡散臭いのは退役軍人で、年齢も学生たちより一回り以上も上だし、名前も変名を使っていた。鉱山会社に勤めた後、軍事工学を学んでいたとも言われる。トレッキング中よく写真を撮っていたが、もう1台、別のカメラも持ち、皆に隠していた。

服から放射能が検出されたのはこの男だ(もう1人は彼の近くで発見された女子学生)。彼は今回が学生たちと初顔合わせで、どうやってグループに参加できたのか、実はあまりよくわかっていない。放射能とこの男を結びつけた秘密工作員説も浮かぶ所以である。

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事件の謎に対するさまざまな解釈

ソ連が崩壊してロシアへの旅がしやすくなるにつれ、世界中の謎解きマニアたちが「ディアトロフ事件」に挑みはじめた。数々のノンフィクション、小説、テレビ・ドキュメンタリー、映画が生まれ、さまざまな解釈が披露されている。どれも一長一短あり、これぞ決定版というものはまだないが、いくつかあげておこう。

I 雪崩説――ありふれていても、一番妥当とされてきた。ただし「死の山」の勾配はわずか16度しかなく、ふつう雪崩は起きない。しかも学生たちの足跡が一部残っていた。
II マンシ族ないし野獣襲撃説――足跡皆無。
III 竜巻説――テント内にいた時ではなく、外へ出てから小さな竜巻に襲われたというのなら、ひどい骨折の説明にもなる。ただ固まって倒れていた理由はわからない。
IV UFO説――数カ月前からこの近辺の上空に正体不明の火球が飛んでいた(目撃証言が多数ある)。もしそれがUFOで、テント近くに着陸してエイリアンが降りてきたら、どんな剛毅な人間でもパニックになって逃げだすだろう。特にこの時代はSF黄金期だった。あいにく物的証拠はない。
V 軍の陰謀説①――火球はUFOではなく開発中の新兵器で、軍事機密をグループに知られたため全員を抹殺。
VI 同②――軍による人体実験の犠牲になった。
VII 同③――グループに同行した元軍人が、山で秘密裏に接触したスパイと何らかの理由で争い、学生らが巻き添えになった。