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「罰ゲームのような環境で子どもを産んでも見合うほど得るものがない」異次元の少子化は女性たちの声なき主張

source : 提携メディア

genre : ライフ, 社会, ライフスタイル, ヘルス

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その理由は「そうするしかない」ように、社会ができていたからでしょう。

何も日本ばかりではありません。

産業界を男が牛耳り、女性が生きていくためには男の稼ぎに頼って家に入るしかなかった。こうしてできた性別役割分担が、女性の社会進出に伴い、音を立てて崩れた。そこから自ずと、少子化が頭をもたげたわけです。

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にもかかわらず、「女は子どもを産んで当たり前」という雑駁(ざっぱく)な常識がまだ世間に渦巻いています。現状の少子化対策は、貧困、子育て支援の不足、結婚相手と出会う機会の乏しさなど、「お金と確率」の問題が重視されがちで、心の方はないがしろにされてきました。そのため女性たちは、既婚・未婚とわず、圧力を感じ、諸手を挙げて歓迎する気持ちにはなれないところがあったのではないでしょうか。

少子化対策を叫ぶ前に、私たちは、妊娠と女性の生涯の軋轢をまずはしっかり受け止めるべきです。

そして、社会の隅々まで見渡し、どこを変えれば、再び女性は子どもを前向きに考えたくなるのか。

それをこの連載で考えていくことにいたしましょう。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
雇用ジャーナリスト
1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。
「罰ゲームのような環境で子どもを産んでも見合うほど得るものがない」異次元の少子化は女性たちの声なき主張

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