「前田健太、日本復帰か?」

 先日、携帯を触っていると、このような文字が目に入ってきました。

 ドジャースと結んだ8年契約が満了するオフに日本球界への復帰も視野に入れているのでは、という内容の記事でした。アメリカに旅立つ時に僕が「広島に帰ってきてください」と言って、マエケンさんはその言葉に「うん」と微笑んでくれたのを思い出しました。

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 前田健太投手の元チームメイトであり、広島代表のファンでもある自分としては、もちろん日本に戻ってきて投げる姿を見たいですが、MLBでまだまだ活躍する姿も見たい――。どちらの思いもあります。

前田健太に憧れて、エースに成長した男

 2015年の自主トレで結成された「チームマエケン」。初期メンバーはマエケンさんをはじめ、中崎翔太、大瀬良大地、藤浪晋太郎、そして僕・中田廉でした。

 今振り返ってみると、錚々たる顔ぶれです。マエケンさんは日本を代表するエースとなり、現在はミネソタ・ツインズで活躍中。先日、怪我から復帰して678日ぶりとなる白星を手にしました。ザキ(中崎)はクローザーとしてチームを3連覇に導き、大地はチームの大黒柱に。藤浪晋太郎は阪神時代、苦しい時期もありましたが、現在はオークランド・アスレチックスで先発や中継ぎ、オープナー問わず様々なポジションで活躍しています。そして、最後は中田廉。チームマエケンの広報として、陰ながら支えています(笑)。

 前田健太の「広島代表のファン」を勝手に名乗らせてもらっていますが、僕と同じくらいマエケンさんを尊敬し、憧れている選手がチームマエケンの中にいます。それは大地です。2014年から2015年までの僅か2年の間で、たくさんのことを学び、吸収し、逞しくなっていく姿を間近で見ていました。

前田健太と大瀬良大地

 2人について語る上で、触れないといけない日があります。2015年10月7日のマツダスタジアムでのドラゴンズ戦。0-3で敗退し、クライマックス・シリーズ(CS)出場を逃してしまった試合です。

 この日に先発したマエケンさんは7回無失点と完璧な投球を見せました。そして8回からリリーフで大地が登板。物凄い重圧の中、結果は3失点と打ち込まれ、敗戦投手となってしまいました。

 試合後にベンチが映し出されると、顔を上げる事ができない大地に寄り添うマエケンさんの姿がありました。負けの責任を大地に背負わせないよう、ピタッと肩を寄せていたんです。カープファンからのお疲れ様の拍手を浴びながら、いろいろと思いが込み上げていたのでしょう。CSへの進出ができなくなったと同時に、このシーズンを最後に広島を離れ、MLBに挑戦することが濃厚になっていました。2人を見ていると「俺が抜けた後のチームを頼むぞ」という無言のメッセージを感じました。そして、この悔しい敗戦が、大地をカープの新しいエースへと成長させていくキッカケになったのではないかと思います。