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地方百貨店の「負のループ」断ち切る「地方ビジネス」の勝ち方「百貨でなく“二貨”」巨大な黄金のゴリラ像で“映え”も意識

source : 提携メディア

genre : ビジネス, ライフスタイル

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そもそも、客数が少ない地方の百貨店に「出店したい」と思うテナントは少ない。特に全国展開しているようなお店だと、わざわざ客数が少ない地方百貨店に出店するメリットはほぼゼロに等しいだろう。出店したとしても、売れ行きが見込める商品は、多くのお客さまが訪れる店舗に優先して並べたいはずだ。

さらに、問題は商品だけにとどまらないという。

地方店には建物の修繕費が回ってこない

北村「商品という“ソフト面”だけでなく、店自体の“ハード面”がすてきじゃないことも大きな問題です。全国展開している百貨店だと、地方の百貨店の売り上げが芳しくなくても、全体の収益にはそこまで影響しません。

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だから地方の百貨店の経年劣化に修繕の費用をかけるくらいなら、収益に大きく影響する都心の百貨店にお金をかけたほうがメリットは大きい。予算が地方に回らなくなってしまうのは当然のことでしょう。

予算がないから修繕にお金がかけられずに老朽化は進む、すてきじゃないからお客さまが来なくなる、テナントが出店したがらない、商品の入れ替えの頻度は低くなる、ますますお客さまが来なくなる……。負のループが回り続けるから、地方の百貨店はどんどん衰退していってしまうのだと思いました」

この“負のループ”を断ち切らなければ、地方の百貨店は衰退の一途をたどる。地方百貨店が次々と閉店していく理由が浮き彫りになった。

「出店なんかするわけないやん」依頼は即断ったが…

リビングハウスが再生に取り組む「JU米子髙島屋」が位置する鳥取県米子市の人口は、約15万人。米子市に住む人たちだけをターゲットにしていては十分な客数は見込めない。商圏人口を広げる必要があるが、米子市は“陸の孤島”ともいわれるほどアクセスが悪い。そんな米子に「わざわざ行きたい」と思わせるだけの魅力づくりが求められるのだ。なかなか実現困難なプロジェクトに思えるが、勝算はあったのだろうか。

北村「JU米子髙島屋さんから出店のオファーがあったのは2021年のことでした。実は担当者から報告を受けた時、『出すわけないやん』と即答したんです。地方の百貨店自体が苦戦しているなか、ましてや場所が米子という“陸の孤島”に新しくお店を出したところで勝算はないだろうと思っていました」