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地方百貨店の「負のループ」断ち切る「地方ビジネス」の勝ち方「百貨でなく“二貨”」巨大な黄金のゴリラ像で“映え”も意識

source : 提携メディア

genre : ビジネス, ライフスタイル

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こうして完成したフロアは、大きく生まれ変わった。エスカレーターを上がった瞬間、まず目に入るのは天井ギリギリの巨大なゴリラの像だ。ある意味“クレイジー”な印象を受ける。

北村「ゴリラの像は、写真映えを意識したんです。高校生など若い人たちにも、百貨店に来てもらいたいと思っていて。未来を担うのは若者です。今は商品を買うお客さまではなかったとしても、訪れること自体を習慣にしてもらうことができれば必ず未来の顧客になります。JU米子髙島屋には今、老若男女幅広い世代のお客さまが訪れていて、にぎわいを取り戻しつつあります」

得られる情報は都会も田舎も変わらない

ハイセンスな家具や雑貨から、ユニークな生活家電、「これは何?」と思わず口に出してしまうようなものまで、フロアにはさまざまな商品が並び、見ているだけでも楽しめるフロアになっている。

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しかし、いくら未来を担うのは若者だといっても、地方では深刻な高齢化が進んでいる。以前の百貨店の姿を知る、年配の人たちにとっては刺激が強すぎる気もするが、そのあたりはどうなのだろうか。

北村「案外、年配の方々からの反応もいいんです。家具ってそんなに頻繁に購入するものではないから、『次が家具を買うのは最後』という人も多い。今まで見たことがなかったようなハイセンスな商品に、その“最後”の心をくすぐられるみたいですね。

先日、徳島の店舗で92歳の女性がソファを買ってくれたんです。ヨーロッパからの取り寄せの商品で一目ぼれされたそうで、『死ぬまでに届けてや』とおっしゃっていました。『地方だから』と無難な商品を用意するような時代ではもうないと思いますよ」

昔は、都心と地方では情報に格差があった。しかしインターネットが発達した現代では、情報の格差はほぼない。全国どこでも得られる情報は変わらず、違うのは、商品をリアルに見る機会があるかどうかだ。

リニューアルオープンした今年1月から5カ月。売り上げは「予想していたよりも好調」で、撤退する予定はないという。今後も店舗スタッフへの教育や集客を通して、百貨店の再生に携わっていく方針だ。

「行って直接見てみたい」と思わせるような、心をくすぐる、ある意味クレイジー化した場所になることこそ、地方の百貨店が生き残ることができる道なのかもしれない。

北村 甲介(きたむら・こうすけ)
リビングハウス代表取締役社長
1977年大阪市生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、ベンチャー企業に就職。その後、デンマーク家具会社の日本法人で家具配送・組み立ての修行を積み、26歳で父が経営するリビングハウスへ入社。2011年に33歳で代表取締役社長となる。著書に『「かなぁ?」から始まる未来 家具屋3代目社長のマインドセット』(幻冬舎)がある。
地方百貨店の「負のループ」断ち切る「地方ビジネス」の勝ち方「百貨でなく“二貨”」巨大な黄金のゴリラ像で“映え”も意識

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