フロアの総面積は450坪。都心の百貨店と比べたら小さめだが、一般的なテナントが20店舗ほど入る規模感だ。オーナー会社の「ジョイアーバン」から提示された予算は、1億円。
北村氏はこの予算を「5倍は欲しかった」という。というのも、新しく店舗を作るのと異なり、今回のリニューアルでは古くなった部分を「直す」費用も必要となる。老朽化しているところを修繕する費用も、棚などの什器を新しく用意するお金も、すべてこの“1億円”に含まれていた。
「百貨」ではなく「二貨」でいい
予算が足りないから一部分だけを変えてみることも頭をよぎりそうなものだが、北村氏はワンフロア全てを一気にリニューアルさせることしか考えていなかったという。
北村「百貨店がつぶれかけていたことは周知の事実でした。“さびれてしまった百貨店”のイメージを払拭して、お客さまにもテナントにも、『すてきに変わるんだ』ということを伝えなければ負のループは断ち切れない。少しの変革だと、信じてもらえません。すてきな場所だと感じてもらうためには、ちょっときれいにしたくらいではだめ。大きなインパクトを与えるために、がらっと変わることが必要でした。
それに、ワンフロアに20店舗などテナントをたくさん入れるのではなく、1店舗に絞ることで、商品の質を上げることができます。地方の百貨店は都心部よりも規模が小さいのに、“百”貨店という名前にとらわれてさまざまな商品を置こうと欲張りすぎです。地方の規模感だと“二”貨店くらいがちょうどいい。商品のバリエーションよりも、内容を絞って質を上げることが大事だと思いました」
高齢化地域でも「写真映え」を意識するワケ
限られた予算に収めるために、工夫を凝らした。
たとえば、お金がかかる床の張り替え。剝いだ床には新しい素材を張らず、その分費用を抑えた。百貨店ではコンクリート打ちっぱなしというのはあまりない。しかし「歴史をそのまま見せるというコンセプトもよいのでは」とコンクリートむき出しのままに。それまでの百貨店の常識にとらわれない、新しいフロアを作り上げていった。