ヤフーやソニーが業界に殴り込み
またネットを通じて不動産を売りたい人、買いたい人をマッチングさせる動きも活発になってきた。ヤフー不動産やソニー不動産などはマンション取引を主体に売主の仲介手数料ゼロを売り文句に不動産業界に蔓延る手数料主義、売り手と買い手を同時に囲い込む両手取引に殴り込みをかけてきている。
不動産は「二つとして同じものが存在しない」という特殊な商品であることから取引も複雑であり、こうしたネット上のマッチングを含め、ネット取引全般に対して否定的な見方をする人もあるが、私は不動産テックが今後不動産取引を活発化させることにおおいに役立つのではないかと期待している。
とりわけマンションの中古流通はネットに馴染みやすい。マンションの部屋は戸建て住宅などと違って、間取りも単純で住戸内の設備仕様を点数化しやすい。また同じ棟であれば建物としての条件がほぼ同じであるため、価格付けが容易である。大規模マンションであれば常に複数の住戸が流通マーケットで取引されていることからすでに相場も形成されていることもネットに馴染みやすい理由のひとつだ。
都内の主要マンションすべてをAIで診断しようとするネット業者
先日、私の事務所を訪れたネット業者の相談には仰天した。彼らの構想は都内の主要マンションのすべてを、AIを使って診断し、住戸別に勝手に値付けして公表しようというものだった。これまでの中古市場は間にたつ不動産業者が経験と勘を頼りに勝手に値付けして取引相場を作ってきた。それに対してAI診断マーケットでは、自分が住むマンションの現在価格が毎日株価ボードのように掲示され、それを見た買い手が所有者にアプローチできるというのが彼らの考えた仕組みである。
マンション相場が上昇期であれば、毎日自宅の含み益が上がるのをニンマリ眺めて楽しむこともできるが、下がっているときにはさぞかし気分が悪いだろうと当初はこのアイデアにはあまり賛同できなかったが、どうだろうか。意外と多くの人が実は自分が住んでいる自宅の本当の資産価値を知らないのが現実だ。上がっているときも下がっているときも常に冷静に自らが持つ不動産の価値を目にすることができれば、売買や賃貸もスムースに決断できるのではないだろうか。また診断技術が上がれば、自宅にしっかりとお金をかけてリニューアルを行うことでお隣の住戸よりも高く評価されることを実感できるかもしれない。不動産テックが不動産の流通市場をおおいに活性化させることにつながるかもしれないのだ。
今度は金融マンがAIに追いつめられる
さて、不動産の証券化の進展で「算数できない、英語しゃべれない」不動産社員を追いやり金融マンが席巻した不動産業界で、今度は彼らがAIに追いつめられることになる。
将来不動産業界を闊歩するのは、金ぴかブレスレットに派手なラメ入りのスーツを着た地上げ親父でも、眼鏡をかけた、痩せて神経質そうな金融マンでもなく、理科系ネットオタクで日本語もしゃべれるのか怪しいような種族が開発したAIになっているのかもしれない。不動産新時代の到来である。