カープファン、あるいはカープの「おじいちゃん」こと安仁屋さんが緊急手術を受けて入院。現在も病院で過ごされていて、多くの人たちがその快復を願っている。第一報は6月26日、安仁屋さんがレギュラー出演するラジオ番組内での発表(安仁屋さんは欠席)。それを知ったカープファンの「心配の度合い」は、通常よりもはるかに大きいものだった。なぜならわずか10日前の6月16日に、カープのレジェンドである北別府さんを失ったばかりだったから。その哀しみが癒えない中でのニュース。増してや安仁屋さんは北別府さんより13歳も年上。心配するなという方が難しい。

安仁屋宗八さん ©時事通信社

衝撃の一報から温かさと爆笑に満ち溢れたラジオ出演

 そこから多くのファンはカープを応援しながら安仁屋さんを心配するという日々が続いていたのだが、7月3日、その「心配」が突如として「安心」に変わる。前述のラジオ番組が始まり、冒頭で安仁屋さんに関する話題になったのだが、安仁屋さんの代役として出演したアナウンサーが「(安仁屋さんは)永久脱毛をしなきゃいけないということで、まあまあの分量があるので、相当、時間がかかってますよ」と言ったのだ。これには驚いた。なんせこっちは本気で「心配」しているのだ。にもかかわらず、いきなり痛烈なイジり。でも、もし深刻な状態ならそんなことを言えるはずがない。安仁屋さんがレギュラー出演している番組でそういうコメントが出るなら大丈夫だ。ホッ……。まさに、胸をなでおろした瞬間だった。

 しかし、それだけでは終わらない。この日は安仁屋さんと特別対談をするために元監督の緒方さんが来ていたのだが、ご存知の方もおられるように、なんと安仁屋さんも電話で緊急出演したのである。アナウンサーが「ある方とお電話がつながっています」。……あれ? これはもしかして? 淡い期待を込めつつ待った第一声は、お馴染みの、そして元気なトーンでの「もしもし!」。安仁屋さんの声と瞬時に分かったスタジオは大盛り上がり。アナウンサーは「声聞いて良かった~!」、緒方さんも「安仁屋さ~ん!」。大げさかもしれないが、まさに歓喜の瞬間。安仁屋さんは明るい声で「看護婦さんの着せ替え人形で、もう下半身も上半身もぜんぶ見られた」。かと思えば、手術の傷口も落ち着いたと聞いたアナウンサーが「看護婦さんも(傷口から)血が出ましたよって、こうやってロジンバッグを……」とボケる。安仁屋さんが「ロジンバッグ首に塗っとるよ、ワシゃあ」と乗っかる。それを聞いた緒方さんが「佐々岡さんやそれ!」とツッコむ。

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 終始、温かい空気。みんなが笑顔になった瞬間。少し声は嗄れていたが、茶目っ気たっぷりの安仁屋さんの声にみんなが癒されていた。しかし、みんなのおじいちゃんはそこでは終わらない。これまた皆さんもご存知のとおり、この日の放送における最大にして最強のパワーワードが発せられたのだ。

安仁屋「でも、でも、行きたいところがあるんですよ」
アナ「ほう」

 出演陣も、リスナーも真剣に耳を傾ける。なんだろう。一体どこだろう……。

安仁屋「もう、退院したらすぐいちばんに行こうと思うのがパチンコ」
一同「ハハハハハハハ!」
アナ「なんだ球場じゃねーのか!」
緒方「(これは)大丈夫だ」

 まさかの「パチンコ」。普通はアナウンサーが言ったように「球場」、あるいは「早く番組に復帰したい」とか「解説をしたい」とか言う場面である。しかし、安仁屋さんの答えは違った。大好きなカープより、大好きな解説より、まずはパチンコ。このパワーワードがすべてのカープファンを完膚なきまでに安心させたのは言うまでもない。