AIやIoTが社会を変動させることが分かっても、古い体質の企業では守旧派が権益を握っている。とはいえ、そのままでは会社が潰れる運命は避けられない。企業再生の第一人者であり、産業界全体から見た人工知能に精通する冨山和彦さんに、これからを生き抜く心構えを一問一答式で訊く、全5回シリーズの第4回(#3「AIで不要になる中間管理職とは」より続く)。

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『AI経営で会社は甦る』(冨山和彦 著
『AI経営で会社は甦る』(冨山和彦 著

Q AI時代にもかかわらず、スピードもチャレンジもない保守的な会社の既得権益層を打ち破るには、どうすればよいでしょうか。

A 諦めるまで粘り強く。集団の空気が諦めとなった瞬間、鬼畜米英からギブ・ミー・チョコレートに変わります。

 日本の組織システムは、歳を取るとみんな既得権者になります。なぜなら年功制のもと、薄く広く社内に既得権がばら撒かれているからです。そして、これこそが一番改革のしにくい理由なのです。むしろほんの一部の人が富を独占してくれているほうが、じつは革命は起こしやすいんですよ。

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 日本の会社のなかで、欧米型の革命モデルで決起しようとすると、たいていの場合、抹殺されます。既得権を持っている人のほうが、結構な人数いるので。しかも彼らは相対的にそれなりの地位にいます。だいたい経営改革をやると、40代ぐらいが中間勢力、50代はほぼ全員守旧派です。

冨山和彦氏 ©平松市聖/文藝春秋

 ですから、あるときには妥協し、あるときにはその間を分断してと、相当にしたたかにやって上手に味方を増やしていかないと、割とあっさり殺されてしまいます。反革命が簡単に起きます。それこそが、ここ20年間ほど、一部の改革的なリーダーの多くが苦しんできた課題です。しかしながら、日立をV字回復させた元社長の川村隆さんをはじめ、その峠を越えてきたリーダーもいらっしゃいます。日本型革命が成就する瞬間の、多くの人々の心理的な心模様というのは、諦めです。ああ、もうしょうがないや、もう時代が変わったんだ、と。集団の空気が諦めとなった瞬間に、結構バタバタバタバタッとシーソーが一方に倒れていく。あっと言う間に、鬼畜米英からギブ・ミー・チョコレートに変わるんですね。だからその時点までは、ある意味では相当粘り強くやっていかないといけません。

©iStock.com

 それから、急にお腹がメチャメチャ痛くなるとか、頭がメチャメチャ痛くなるという瞬間もチャンスです。そうなる前にも、このままのビジネスモデルだとまずいんじゃないか、とじつは社員の多くが内心思っているんですよね。思っているんですが、「俺、既得権益を持ってるしな」と動かない。でも、お腹が痛くなるとシーソーがすうっと動くんですよ、その瞬間だけ。だって、もうこのままだと会社潰れちゃいそうで、みんな仕事がなくなっちゃうというリアリティを感じるので。ここが勝負ですね。こういうのをうまく利用しないで、何もないところで改革だ、グローバル型だと叫ぶと、たいてい5年以内に殺されます。