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手術を受けたアメリカ人2名は死亡した…安価のため急増中の「メキシコ整形旅行」の危険すぎる実態

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急成長を続けるメキシコの整形市場

TPSMは2001年の設立以来、整形手術とホテルでの回復・療養をセットにした包括的な「美容整形バケーションプラン」を提供してきたが、このプランではホテルに宿泊した患者を医師が毎日訪問し、術後の経過観察や包帯交換などを行っている。

メキシコシティは世界的に有名な観光都市で治安も悪くなく、メキシコ第二の都市グアダラハラなどと並んで、『国際医療トラベルジャーナル(IMTJ)』誌によってメキシコを代表する医療観光都市に選ばれている。つまりこれらの都市では犯罪や医療ミスのリスクが少なく、安くて良質の医療を受けられるということだ。

TPSMによれば、この10年間メキシコの美容整形業界は成長し、市場規模は25億ドル(約3500億円)にのぼる。その背景には国内経済の成長で整形にお金をかける人が増えたことや、人々の整形に対する意識が変化し、「整形はより良い仕事や魅力的な配偶者を見つけるのに役立ち、未来の成功につながる」と考える人が増えたことがあるという。

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また、美容整形の医療ツーリズムも年20~25%のペースで成長し、この傾向は今後も続くと予想されている。

どこの診療所で手術を受けるかが生死を分ける

メキシコシティのように医療観光都市に選ばれている地域で施術すれば良質な医療が受けられるが、メキシコの医療ツーリズムの問題は、どこの診療所で手術を受けるかによって患者の安全や医療の質に大きな違いが出ることだ。

たとえば、冒頭で述べたマタモロスなど国境沿いの都市は治安が悪いだけでなく、医療の質も低いと言わざるを得ない。実際、2022年7月には国境沿いのバハ・カリフォルニア州ティファナの診療所で、整形手術を受けた米国人3人が死亡している。

メキシコのバイリンガル新聞「ラ・プレンサ・ラティーナ」(2022年8月8日)の報道によれば、1人目の被害者はコロラド州デンバーのグアテマラ領事の妻、マリア・シャコンさんで、彼女は7月15日、国境検問所から10キロほど離れた診療所で手術中に亡くなった。この診療所は過去に無許可で営業して閉鎖命令を受けていたが、それを無視して診療を続けていたという。

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