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手術を受けたアメリカ人2名は死亡した…安価のため急増中の「メキシコ整形旅行」の危険すぎる実態

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それは筆者が約20年前、米国で美容整形の患者や外科医を取材した時に強く感じたことだ。米国では豊胸やフェイスリフト、脂肪吸引など外科手術の割合が高く、しかも後遺症や医療ミスなどのリスクがあっても自分が求める体型を実現するために手術を受ける人が多い。

たとえば、「巨乳信仰」が強い米国では豊胸手術が大人気だが、筆者が取材した患者の中にBカップからDカップにして夫婦関係が盛り上がったという30代の女性がいた。ところが彼女の幸せは長く続かず、手術から約半年後に頭痛や視力低下などの体調不良に襲われた。「豊胸手術が原因ではないか」と思い、複数の医師の診断を受けたが、はっきりした原因はわからなかったそうだ。しかし当時、豊胸手術を受けた人で体調不良を訴える人は少なくなかった。

それからシリコンと生理食塩水を混合した人工乳房を入れた女性にも取材したが、彼女はある朝ベッドから起き上がろうとした瞬間にそれが破裂し、激痛に見舞われた。その時の状況を「まるで100本の針が胸に突き刺さったような恐ろしい痛みだった」と話した。

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年間で2兆円以上を整形に使うアメリカ人たち

豊胸手術を受けた患者の健康被害は90年代に大きな問題となり、患者側が起こした集団訴訟で人工乳房メーカーが数十億ドルの莫大(ばくだい)な賠償金を支払っている。

こうした問題が起きたにもかかわらず、整形ブームはどんどん過熱していったが、そこで大きな役割を果たしたのがハリウッドのセレブたちだ。彼らは自分の容姿や体型を良くするために積極的に整形を行い、その情報をエンターテイメントやファッション関連のメディアなどで発信したのである。

たとえば、80年代を代表する歌手でアカデミー主演女優賞を獲得した女優のシェールは、豊胸やフェイスリフト、鼻整形、皮膚整形などを受けたことを認めている。現在77歳の彼女は生涯で70万ドル(約9800億円)以上を整形に費やしているとの報道もある。

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