2021年、交際相手の3歳の息子に熱湯を浴びせ殺害した罪に問われている松原拓海被告(25)に、検察は懲役18年を求刑した。
検察いわく「危険きわまりない」「類をみない悪質な犯行」――恋人の子供に対する常軌を逸した“虐待”に対する判決の行方が注目される。
なぜ松原被告の殺意は「連れ子」へと向かってしまったのか。事件の深層を追った当時の記事を再公開する。(初出:2021年10月29日。年齢、肩書は当時のまま)
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大阪府摂津市のマンションで、新村桜利斗(おりと)ちゃん(3)が長時間熱湯をかけられて死亡し、母親と同居していた交際相手の松原拓海被告(24)が逮捕・起訴された事件。大阪府警は27日、新たに母親の行歩寿希容疑者(23)を暴行容疑で逮捕した。
松原被告から押収した携帯電話を調べたところ、行歩容疑者も松原被告と一緒になって桜利斗ちゃんを虐待する動画が発見され、悪質性が高いとして立件に踏み切った。行歩容疑者の地元の友人たちは、「寿希ならやりかねない。全く意外ではなかった」と口をそろえた。
行歩容疑者は、大阪府岸和田市の児童養護施設に小学校入学前に姉と一緒に入所した。当時の行歩容疑者をよく知る人物は、行歩容疑者の“子供嫌い”は施設にいた頃から既に見られたと話す。
「寿希は両親からネグレクトの虐待を受けて施設に入りました。普通、授業参観や運動会などの学校行事や、休日などに両親が訪ねて来ることが多いのですが、寿希の両親は一度も顔を見せたことがありませんでした。『両親はいるのか』と一度尋ねたことがありましたが、『いるかいないかわからん。顔も覚えとらん』と言っていましたね。
同じ施設の3歳児を蹴ったり、室内を引きずり回したり…
住んでいた施設の女子棟は、同じ建物内に幼児棟も入っていたのですが、寿希が小学校高学年の頃には、今回犠牲になった桜利斗ちゃんと同じ3歳の子に暴力を加えることもありました。ふざけてちょっかいを出してくる子どもたちを私たちは適当にあしらっていましたが、寿希は違いました。『ほんまにしばいたる』と怒って、蹴ったり、足をかけて倒したり、室内を引きずり回したりと、気が済むまで“報復”を繰り返すんです。そもそも子供が嫌いだったのだと思います」
一緒に入所した姉は優しいがとても地味だったといい、そんな姉を見て「姉妹なんて思わんで欲しい」と周囲に話していたという行歩容疑者。学校での静かな性格とは違い、施設内では“ヤンキー感”を演出していたといい、地元の小・中学校を卒業した後は、大阪府泉南市の高校に進学。一気に行動はエスカレートしていく。