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鉄オタ崩れの「珍撮団」には億単位の損害賠償を求めるべき…鉄道ライターが「スシローに学べ」というワケ

source : 提携メディア

genre : ライフ, 社会

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なぜか「迷惑撮り鉄」を訴えない鉄道事業者

本題に戻って、珍撮団の迷惑行為に対して、鉄道事業者が賠償請求した話を聞かない。列車を停めたとしても犯人が特定できないという理由もあるだろうけれど、そもそも警察に被害届を出さない。「乗客に被害がなかったから」とやり過ごしているようだ。

しかし、列車を停めれば多くの鉄道利用者が時間を奪われる。定時運行は鉄道輸送の信頼の源泉だから、鉄道事業者は顧客の信頼を失っている。そこに気付かないのか。こうした被害は簡単にお金に換算できるものではないが、数百万円や数千万円では済まないだろう。

珍撮団の行為は実害もある。列車が急ブレーキをかけた場合、固定された車輪とレールがこすれて、円形の車輪の一部に直線ができる。これは「フラット」といって、放置すると走行中に大きな振動や騒音が発生する。乗り心地が悪くなるだけではなく、部品の脱落などの不具合が起きる。修正する作業、交換車輪がなければ車両の運行停止、列車の運休となる。

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刑事と民事の両面で厳正に対処すべき

こうした実害があるにもかかわらず、珍撮団の反発と企業批判を恐れているのか、あるいはめんどうだからか、鉄道事業者は対処しない。せいぜい駅の入場を規制し、警備員を配置する程度。しかも強い調子で注意したら、態度の悪い駅員だと写真を晒されてしまう。そのリスクのほうが大きくなっている。

もちろん極度に悪質なものは通報し警察が動くけれども、損害賠償には至らない。甘すぎる。もし風評被害を恐れているとしたら、鉄道ファンと珍撮団の区別ができていない。犯罪者は刑事罰を受けるべきだし、損害を賠償してもらう。それが今のところ再犯防止の特効薬だ。鉄道事業者は珍撮団から被害を受けるたびに、キッチリとそれに見合った賠償請求をし、再発防止に取り組んでほしい。

そして善良なる撮り鉄のみなさんは、そのカメラで珍撮団の悪行を撮影し、警察に提出しよう。ネットで拡散して遊んでいる場合ではない。珍撮団の取り締まりに協力することは、自分の趣味の世界を守ることになる。

杉山 淳一(すぎやま・じゅんいち)
鉄道ライター
1967年生まれ。都立日比谷高校卒。信州大学経済学部、信州大学工学系研究科博士前期課程終了。経済学士。工学修士。IT系出版社でPC誌、ゲーム雑誌の広告営業を担当した後、1996年からフリーライター。ウェブメディア勃興期にニュースメディアで鉄道ニュースデスクを担当したのち、主にネットメディアで鉄道分野を主に執筆。
鉄オタ崩れの「珍撮団」には億単位の損害賠償を求めるべき…鉄道ライターが「スシローに学べ」というワケ

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