2021年8月6日、小田急線の車内で当時20歳の女子大学生3人を包丁で切りつけたとして、殺人未遂などの罪で起訴されていた対馬悠介被告(37)。7月14日、東京地裁は対馬被告に懲役19年の判決を言い渡した。

 被告人質問で犯行の動機について、「あらゆる人が幸せに見えた」「(自分だけ)貧乏くじを引いている」などと語った対馬被告。あの時、電車内で何が起こったのか。社会に衝撃を与えた犯罪の記憶を風化させないため、当時の記事を再公開する。(初出:2021年8月8日。年齢、肩書は当時のまま)

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 8月6日午後8時半頃、小田急線成城学園前から祖師ヶ谷大蔵駅へと走行中の快速急行の電車内で、川崎市多摩区の職業不詳・対馬悠介容疑者(36)が計10人を刺傷した事件。警視庁は7日、対馬容疑者を殺人未遂容疑で逮捕した。

 現場となった車内は、突然の凶行に騒然とし、乗客はパニック状態になっていた。居合わせた人はTwitterにこう書き込んでいる。

「医療従事者はいらっしゃいませんか!」

《居合わせた医療従事者の女性と思しき方の「他に医療従事者の方はいらっしゃいませんか!」「タオルを持っている方、貸していただけませんか!」と手当てしながら協力を求める声が印象的だった》

祖師ヶ谷大蔵駅のホームを調べる警察官 ©時事通信

  捜査関係者が語る。

「対馬容疑者はトートバックから刃渡り約20cmの牛刀を取り出し、振り回した。しかし途中で牛刀の柄が折れたため、トートバッグにいれていたサラダ油を取り出し、周囲に撒いた。チャッカマンで火をつけようとしたが上手くつかず、位置情報がバレないように慌ててスマートフォンを投げ捨て、現場から逃走した」

 けが人は20代から50代までの男女合わせて計10名。命に別状はないものの20代の女子学生が腹部や背中など7カ所を切りつけられ、重傷を負った。

 

逮捕された対馬容疑者 ©時事通信

 対馬容疑者は容疑を認めており、「誰でもよかった」「殺せなくて悔しい」と供述する一方、「(重傷の女子学生が)勝ち組の典型にみえた」「男にチヤホヤされてそうな女性を殺してやりたい」とも吐露しているという。対馬容疑者はどんな人物なのか、そしていつから「勝ち組の女」に恨みを募らせたのか――。