ナインの中から特に不満が聞かれた開催日程
鷹の祭典は毎年7月後半に基本的に行われるが、これにも理由がある。子供たちの夏休みが始まりイベントを仕掛けなくても満員になるのでは?と思われるかもしれないが、じつはチケット販売にかなり苦戦するシーズンだった。長い夏休みを想定したり、お盆期間に遠出したりするなどといった理由から、ファンといえども7月は財布の紐を固くする人が多かったのだ。そこでユニフォーム配布という付加価値をつけたところ、これが大ヒットしたというわけだ。
満員になれば球団は潤う。チーム強化への投資を積極的に行えるのも、鷹の祭典が1つ貢献をしている。また、球場はガラガラよりも満員のほうが特別な雰囲気を味わうことができる。足を運びたくなる空間づくりは、ライト層や新規の球団ファンや野球ファンの獲得にもつながる。これも大きなメリットである。
レプリカユニフォームを無料配布するという試みはまだ球団が福岡ダイエーホークスだった2004年に始まり、翌2005年のソフトバンク元年から「鷹の祭典」の名がついた。
まもなく20年になる。
夏になれば福岡の街では、あちこちで鷹の祭典ユニフォームを着た人々に出会うことができるのが当たり前になった。バスやタクシーの運転手、駅員、スーパーの店員、はたまたピザの配達員まで。
球場に応援に来たファンはユニフォーム姿のまま街を歩き、小学生はホークスのキャップを被り通学したり遊びに行ったりするのも福岡では珍しくない。
文化だって壊れるのはあっという間。そして壊してしまえば、もう再生はなかなかできない。
鷹の祭典をなくすなんて、そんな勿体ないことをどうして出来ようか。
ただ、今のままでよいのかという問題提起は必要だろう。鷹の祭典はこの2年間の負け越しがクローズアップされるが、じつは2020年シーズンから4年連続で負け越している。かつては鷹の祭典といえば、強いイメージだった。2004年から2015年までは通算34勝13敗で勝率.723を誇っていた。2014年から2015年にかけては「鷹の祭典11連勝」も記録している。
今年、ナインの中から特に不満が聞かれたのが開催日程だ。6月23日~25日にPayPayドームでオリックス戦を行って3試合目の終了後すぐに東京へ移動。26日の月曜日に「鷹の祭典in東京ドーム」を戦った。27日火曜日は移動で、28日水曜日からは再びPayPayドームという流れだった。
7月は、10日月曜日に「鷹の祭典in大阪」が組まれたことで7連戦(福岡3→仙台3→大阪1)に。また、この大阪では西武と対戦したのだが「10日大阪→12日北九州・鷹の祭典→13日福岡」と日々球場を変えての変則3連戦だった。
もちろんプロ野球は興行であり、全国各地のファンへ最高のプレーを届ける使命がある。また、前述したとおり鷹の祭典は球団ビジネスの肝となっているイベントであり、それは選手たちへの年俸として還元もされている。選手側の文句ばかりがまかり通るわけではないものの、たしかに近年は環境とビジネスとバランスの傾き方が変わっているように映らなくもない。現場の意見を取り入れながら、鷹の祭典が未来永劫に発展していく方策を見つけていかなければならないタイミングに来ているのかもしれない。
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