勝つことがこれほど難しくて、こんなに尊くて、嬉しいものだったのか――。

 応援する側が感極まったのだからユニフォームを着て戦っている彼らは日々募っていく不甲斐なさや悔しさとどんな気持ちで向き合っていたのだろうか。

 想像するだけで、また鼻の奥がツンとしてきやがる。

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 7月25日、ホークスは5-0でオリックス・バファローズに勝利し、球団54年ぶりとなる「12連敗」という長いトンネルからようやく脱出した。先発した有原航平が最後まで投げきりホークス移籍後初の完封勝利を飾った。9回115球11奪三振の力投だ。打つ方では8回表に主砲でキャプテンの柳田悠岐が、難攻不落の山本由伸の外角146キロフォークをレフト線への2点タイムリー二塁打にして、勝利をぐっと手繰り寄せた。柳田は二塁ベース上で両手を大きく突き上げてガッツポーズ。その流れから、中継画面では万感の表情で何やらつぶやく様子も映し出された。両目が少し潤んで見えたのは気のせいか。

 ともあれ、連敗の終わりは逆襲の始まりだ。

 翌26日も7-1のスコアで、オリックスに連勝した。カーター・スチュワートJr.が来日5年目で待望の初勝利を飾れば、打線は今宮健太の4号ソロ(同点)、甲斐拓也の6号3ラン(勝ち越し&決勝点)、近藤健介の13号ソロ(ダメ押し)と3発の花火を打ち上げた。そして柳田はこの日も2点タイムリーを放った。

 ホークスは、チームもファンも7月7日から始まった「悪夢の18日間」と完全に別れを告げたように見える。「1つ勝てば、変わります」。藤本博史監督の言葉は本当だった。

どうすればチームが好転するのか 3つのアイデア

 だけど――。

 水を差すようで申し訳ないが<喉元過ぎれば熱さを忘れる>で果たしてよいのだろうか。

 レギュラーシーズンはまだ56試合も残っている。失った貯金を取り戻すチャンスが大いに残されているともいえる一方で、まだシーズンの3分の2にも到達しておらず勢い一本で突っ走るにはまだゴールが遠すぎる。やはり足元をしっかり固めながら進んでいかねばならない。

 黒星が積み重なるあいだ、ファンはみな“監督”になったはずだ。どうすればチームが好転するのか。自分に何の権限もないのは百も承知だが、いてもたってもいられず時間も労力も惜しむことなくホークスのために悩み、考え、思いを巡らせたのではなかろうか。

 筆者も考えた。アイデアは3つある。

 1つ目は『近藤と柳田の打順を入れ替える』。

柳田悠岐(右)と近藤健介 ©時事通信社

 12連敗を招いた大きな要因の1つに打線の得点力不足が挙げられる。敗れた12試合のうち、10試合が1試合2得点以下だった。

 だが不思議なのだ。パ・リーグの打撃ランキングを見てほしい。打率は上位6人のうち4人もホークス勢が占めている(2位柳田、3位近藤、4位中村晃、6位牧原大)。本塁打は3位柳田、4位近藤。打点も2位柳田、3位近藤で5位に栗原の名前がある。

 連敗が伸びていく中でベンチは打順にメスを入れた。8連敗を喫した翌日の7月17日の試合では中村晃が約2か月ぶりに1番打者ではなく5番に。トップバッターを務めたのは三森大貴だった。球宴明けの後半戦が始まって2試合目の23日には近藤と柳田の打順が1つずつ上がって「2番近藤、3番柳田」となった。4番には中村晃が3年ぶりに起用された。

 結果的に連敗を止めたオリックス戦では結局「3番近藤、4番柳田」に戻りその2人が大いに機能して勝つことができたわけだが、ここまで積み重ねてきた成績を踏まえると実は2人の並びを入れ替えたほうが効果的なのではないかと考える。

 ともに出塁率4割超の両選手だが、今季の得点圏打率には大きな差がある。近藤はリーグでも1位の.395を残しているのに対し、柳田は.270しか打てていない。過去の実績などから「近藤が出るもしくはつないで、柳田が還す」というイメージがどうしても出来上がってしまっているが、固定観念に縛られないほうがいいのではないかと考えるのだ。