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〈勤務時間内に行う努力が必要〉〈予習・振り返りは自己研鑽〉

 その後、今年4月に職員たちに向け、アップデートされた資料〈Ver.2.0 2023年4月〉版が配布された。こちらも表紙には〈院外持出厳禁〉と明記されている。その一部を抜粋すると、以下の通りだ。

Q:新しい治療法や新薬についての勉強

*新しい治療法や新薬について保険適応になっているのであれば(もしくはもうすぐ承認)医療業務、未承認であれば患者さんに還元されないので自己研鑽の範囲では?

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A:新しい治療法や新薬の保険適応に関係なく、自己学習は自己研鑽になります。

Q:自分が主治医である患者の手術、検査、処置等についての予習や振り返り

*就業開始前の朝のカルテチェック、予習は医療業務に入らない?

*朝の始業前の時間の回診なども医療業務では?

*術前・後、検討会の発表のための予習・振り返りは?

A:時間によらず、カルテチェック、予習、復習、回診等は医療業務にあたります。これを、できるだけ勤務時間内に行う努力が必要です。就業開始前ではなく、可能な限り、就業開始時間(8:30)と外来、検査開始時間(9:00)の間に行うよう各科で工夫が必要です。

(略)

 自らが術者である手術や処置等の予習や振り返り、検討会の発表のための準備としての予習・振り返りは自己研鑽になります。

〈自己研鑽と時間外医療業務の区別についてのQ&A〉

 このように、職員から寄せられたとみられる*の質問を参考に、Q&A形式での説明が並ぶ。別の現役職員が嘆く。

「例えば若い先生だったら、手術の事前に上司と方法について確認したり、本を読んだりして勉強するのが当たり前です。1日3時間くらいはかかったりする。人の命を扱うんですから当たり前です。新薬についての勉強はベテランも含めてやりますが、製薬会社の人に病院に来て頂いて説明を受けたり、ウェブセミナーを受講することもある。目の前の患者さんを助けるために、予習をしたり勉強をしたりするわけですし、これが業務に当たらないというのは正直、納得できません」

 また、叩き台と見られる2022年10月版と、実際に職員に配られた2023年4月版を比較すると、2023年4月版では〈当院における自己研鑽と時間外医療業務の区別の具体的な例〉のリストとして、自己研鑽の例の最後に〈専攻医プログラムに沿った学会発表〉などといった文言が追加されていた。

〈具体的な例〉の一覧 22年10月版
〈具体的な例〉の一覧 23年4月版

 関西地方の別の病院の勤務医が解説する。

「昔でいう後期研修医に当たる専攻医を一人前の専門医に育てることが病院の使命です。専門医になる上で学会発表は免れない。これを業務時間外とするのはさすがにブラック過ぎます。うちの病院では間違いなく『業務』として扱いますよ。高島さんは、専攻医として学会発表の準備に追われていたこともまた、大きな負担になっていたようですが、甲南医療センターではこれを『自己研鑽』と見なすという結論にしたのでしょうね……あくまで過剰労働ではないというスタンスを取りたいんだと思います」