多くの“業務”が「自己研鑽」扱いに
2023年4月版では、以下のようにQ&Aが続く。
Q:参加義務のない上司、先輩が施行する手術、検査、処置等の見学 上記の途中で手伝いを依頼され手伝った場合
*主治医として患者の治療のためのものは業務では?
*手伝い(診療上の場合)を依頼され手伝った場合、拒否したのに手が足りなくて手伝った場合は業務では?
(略)
*“参加の義務のない”とは誰が決めるのですか? 上司・先輩への忖度で実質義務の様なものだと思います。すべて医師として必要な医療業務の中の1つと思います。指導医を取るまでは義務にしてあげたらいいのでは?
A:“参加の義務のない”とは、基本的には、主治医以外の患者の手術、検査を指しますが、上司の命令、指示で行う見学は業務、それ以外のものは自己研鑽です。主治医である患者の手術、検査の見学は当然医療業務になります。見学中の手伝いの扱いは非常に難しいのですが、手伝いが常態化している場合は業務として扱い、常態化していない場合は自己研鑽になります。
この〈それ以外のものは自己研鑽〉は繰り返し出てくるワードだ。実際に業務と認められる仕事は限定的で、多くの“業務”が「自己研鑽」扱いになっている。最後のQ&Aは、次のような病院の見解で締めくくられていた。
Q
*本人が「自己研鑽」として行っていないことを、上司が「自己研鑽」だと決めつけたり評価することはおかしい。
A:一般企業と同じく、病院に勤務する医師の労務管理には一定のルールが必要であり、各勤務医の勤務状況を医療業務とするか自己研鑽とするかは、労働基準局通達を基にしたこの指針に記載した当院の規則に則って、最終的には上司が判断します。
中堅の現役職員が訴える。
「この文言には唖然としました。結局、『自己研鑽』か否かを判断するのは、上司だということです。このようなマニュアルがまかり通る限り、いつまで経っても、うちの病院の労働環境は良くならないと思います」
甲南医療センターに「医師の時間外労働と自己研鑽についての取り扱い指針」についての見解を求めたが、遺族が訴訟提起の意向を示していることを理由に「本件についてのご質問については回答を差し控えさせて頂きます」とした。
あれも業務外、これも自己研鑽……。若手医師の自殺という悲劇を招いた甲南医療センターの労働環境について、「週刊文春」には職員たちから続々と告発が寄せられている。
8月22日(火)12時配信の「週刊文春 電子版」および8月23日(水)発売の「週刊文春」でも、甲南医療センター26歳医師自殺を巡る更なる問題について取り上げる予定だ。
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文春リークス:https://bunshun.jp/list/leaks
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