残暑が残る仙台。2軍施設のある「森林どり泉グラウンド」では、若手に混じって、ひときわ大きな声を出しながらノックを受ける銀次の姿があった。

「どうしたんですか? 取材なんて珍しいですね!」

 笑いながら声を掛けられた。汗びっしょりのアンダーシャツを着替えていると、腕と顔だけが真っ黒に焼けていた。思わず「Tシャツを着ているみたいだね」と突っ込むと、「ハングリー精神を持ってやってますよ」と返って来た。

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「ハングリー精神」。その言葉にはどんな思いが込められているのだろうか。

「ベテランになってもいろんなファームの地方球場に行って、そのなかでもしっかり結果を出すようにやっていかないといけない。『こんな球場でやるの?』とかではなくて、そういう(どんな状況や)場面でも結果を出していかないと駄目。そういうところでもハングリー精神を出していかないと、試合ではなかなか結果は出ないんです」

 プロ18年目のベテラン。一言、一言に重みが感じられた。

銀次 ©時事通信社

ファームで過ごす日々が必要だったと思えるように

 言わずと知れた2013年の日本一を知るVメンバーのうちの一人。通算成績(9月7日現在)も1234試合で打率2割9分、28本塁打、470打点と実績は申し分ない。東北が誇るヒットメーカーも、今季は競争の世界の厳しさを実感しただろう。守る一塁と三塁のポジションは1軍でもかなりの激戦区。中日から涌井秀章とのトレードで加入した阿部寿樹、新外国人のフランコに加えて、鈴木大地、伊藤裕季也と日替わりのようにオーダーに名前が並ぶが、銀次の名前はまだ載ってはいない。

「今、ここ(2軍)に何で居るのかをしっかり考えながらやっています。野球を知っている三木(肇)監督の下で野球ができていることはこの先に絶対つながる。何でここにいるのかを考えてやっているところです」

 今この瞬間、この場所でしか学べないことも多いと捉え、今後の野球人生においても、ファームで過ごす日々が必要だったと思えるように、悔いなく過ごそうという気持ちが垣間見えた。

 華々しい舞台の第一線で活躍してきた男にとってはたとえ2軍であっても「楽しいですよ。毎日違うことが起きるし、一緒なことは起きないので毎日が新鮮。何が起こるのか楽しみ」と言い切る。野球ができる喜びを持ってグラウンドに立っている。