今年も夏の甲子園の季節がやってきた。宮城の野球ファンの注目は言うまでもない。仙台育英、史上7校目の連覇への挑戦だ。この記事の配信日は、第4試合で仙台育英は聖光学院とみちのく対決。これはもう、この方に話を聞くしかないだろう。夏連覇の“大先輩” 田中将大投手である。
甲子園の申し子が語る連覇の難しさ
直近で夏連覇を果たしたのは、2005年の駒大苫小牧にまで遡る。当時2年生の田中将大は、チーム最多投球回の活躍で優勝に大きく貢献した。今年の高校3年生は、この年に生まれた。3連覇を目指し、斎藤佑樹擁する早稲田実業と死闘を演じたあの年は1歳。前人未踏のシーズン24連勝を達成した2013年は8歳。海を越えメジャーリーガーとなった2014年は9歳。今の高校生にとって、田中将大が甲子園で投げた姿は映像でしか見たことはないだろうが、その後のNPB、MLBでの大活躍を目の当たりにしてきただけに、幼少期の憧れの選手であったに違いない。
甲子園連覇には何が必要なんだろうか。本人に直撃してみた。
「(連覇がかかった年は)メンバーは違えど、相手から研究されているのは感じていました。仙台育英さんもレベルの高い野球を今年もされると思うので、甲子園でも自分たちの野球をいかに出来るかだと思います。相手も甲子園に出てくる高校なのでいい野球をしてくると思うし、その中でどんな状況でもいつものプレーが出来るかが大事になってくるのではないでしょうか。(選手たちには)とにかくいい準備をして、自分たちの出来ることをやって欲しいです」
2連覇の喜びと、3連覇を逃した悔しさ。その両方を知る男の言葉には、やはり重みがある。仙台育英の1回戦の相手は浦和学院。好投手を複数擁する両軍とあって、大方の予想は投手戦ではないかと言われていた。しかし、蓋を開けてみれば、両軍合わせて37安打の乱打戦。宮城大会では経験したことのないような試合だったが、最後まで集中力を切らさず逃げ切った。どんな状況でも、慌てず自分たちのプレーを貫く。
先の田中の言葉が思い出される。
昔から夏は強い方だった
そしてもう一つ。夏の甲子園は暑さとの戦いもある。この時期は選手たちに夏バテ対策について質問することが多いのだが、田中の場合はこんな答えが返ってきた。
「プロ入りしてから夏バテで苦しむことは一切なかったですね。夏場に体重が落ちるようなこともなかったですし、高校時代は体重が落ちないように食べろ食べろと言われてきたので、甲子園期間中は逆に体重が増えていました。暑いのは苦手ですが、毎年夏場に調子が上がってくるので、嫌いな時期ではないです」
7月、8月の成績は、2021年が4試合で1勝0敗 防御率2.00。2022年が8試合で4勝2敗 防御率2.94。日本球界に戻って来てからの過去2年間を見ても、夏場の防御率はシーズン通算よりもいい数字が残っている。2013年には7月から8月にかけて4試合連続完投勝利というのもあった。高校3年間は北海道で過ごしたが、生まれは甲子園から程近い兵庫県伊丹市。夏の暑さに強いのは、生まれ持った体質もあるのだろうか。
灼熱の甲子園に負けない強さも、夏の甲子園を制する上では重要な要素になる。