破竹の8連勝がストップするも、すかさず連勝、夏場に苦労するイメージが強い東北楽天ゴールデンイーグルスとは思えない快進撃が続いて前半戦が終了した。ぷっつりと切れてしまていた気持ちをもう一度結び直してくれたイーグルスの選手達の頑張りには頭が下がる。気づけば現在借金は4つ、3位ホークスとは5ゲーム差の4位までたどり着いた。何か小さな光が微かに見えてきたように感じるのは僕だけではないだろう。チームにいい流れを呼び込んでいる選手はたくさんいるが、その中でも伊藤裕季也選手には個人的に縁を感じている。
「裕季也は、今シーズン活躍しなければ、クビです」
2023年が明けて早々、三重県四日市市でお仕事があった。
元々は芸人の先輩が行くはずだった仕事だが、その方がどうしてもスケジュールがあわないという事で、野球好きの僕ならと頼まれた仕事だった。大阪上本町駅から近鉄特急に乗り込んだ。僕にとっても今年の仕事始めという事もあり気合いも入る。
近鉄四日市駅に到着、駅前の大きなホテルに向かった。
「かみじょうさん、今日はよろしくお願いします! 盛り上げたって下さいね!」
ホテルのロビーで恰幅のいい男性から声をかけられた。
「あっ、裕季也の父親です」
僕の2023年は伊藤裕季也激励会の司会から始まった。会の始まりの挨拶、お父さんからの言葉が強烈に印象に残っている。
「本人もわかっていると思いますが、裕季也は、今シーズン活躍しなければ、クビです。来年この会も出来ないでしょう。こいつが頑張るしかないんです」
厳しい言葉だが、父親じゃなければ伝えられない深い愛がある。激励会の後、食事ができなかった僕を気遣い、お父さんが食事に誘ってくれた。そこには彼も参加してくれた。
「えっ、左利きでしたっけ?」
右投げ右打ちの彼が左手で箸を持ち、ひじきの煮物の中の小さな大豆を上手に持ち上げていた。
「いや、めちゃくちゃ右利きなんですけど、バッティングでも左手の使い方が納得いかなくて、それが出来るように、左で(笑)」
翌月の沖縄キャンプ、レンタカーのトラブルもあり、金武町ベースボールスタジアムに到着した際には、もう練習は終了だといわれた。閑散とした球場から一定の間隔で響く打球音。遠くに見えたのは背番号39の背中だった。元楽天の鉄平氏が言う、
「勝手なイメージで、スマートに野球やるタイプかなぁと思ってたんです。全然違った。泥臭く、めちゃくちゃ声出しますし、チームには欠かせない存在です」