あの涼しげなマスクに、熱く燃えたぎる魂を宿している
今シーズン6月の広島東洋カープとの交流戦をマツダスタジアムで観戦した。友達にいい席が取れたと言われ、行ってみれば、三塁側ベンチ真横の正面砂かぶり席の最前列。ネクストバッターズサークルまで1mもなかったと思う。
6ー3で迎えた8回表の攻撃に入るあたりだったと思う、ベンチからバットを持って出てきた伊藤裕季也が素振りを始めた。ピッチャーに打席がまわるイニング、「俺を使え」と言わんばかりに僕の目の前でスイングする。「待て待て」と今江敏晃打撃コーチが笑顔で彼をベンチに戻した。
スタートから出てない選手がそれを出来る事はとてもすごい事だと思う。
人は見た目で判断してはいけない、いや見た目が9割だ、いやそんな事はどうでもいい、あの涼しげなマスクに、熱く燃えたぎる魂を宿している。
これが唯一の真実だ。
「オヤジの誕生日だったんですっ」
今シーズン、エスコンフィールドHOKKAIDOで行われた開幕戦が強く印象に残っているという。プロ野球選手になって初の開幕一軍、開幕スタメンに加え、大切な人の誕生日だった。サードの守備では横っ飛びのファインプレー、そして歴史に名を刻む新球場での第1号ホームランを放ってみせた。
「後半戦は、裕季也のおかげで勝てたという試合を沢山したいです。優勝するための大きなピースとなります!」
年始のお父さんの言葉を思い出した。
「こいつが、頑張るしかないんです。」
シーズン後半戦が始まる。
伊藤裕季也が僕たち楽天ファンをさらに熱くさせてくれるだろう。
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