「補う力」と「巡り合わせ」を引き出した不調放置
「オーダー固定化」の弊害として、不調の選手を使い続ける「無駄」も指摘された。調子や能力をもっと短期間で見直し、調子のいい選手や成長が見込める選手を使ったほうが「瞬間最大出力」を高め、得点力を高レベルに維持できる――そういう主張だ。
正しそうだが、「ぶっちぎり優勝」という成果を前に、本当に正しいかどうかは疑問だ。確かに今季の阪神は森下、佐藤、ノイジー、大山らが大きく調子を落とす時期があった。森下や佐藤はスタメンから外し、二軍に降格させたこともあったが、どちらかというとメンタル面の問題を早く立て直そうという意図があってのもの。そうでない調子落ちは、放置することが多かった。
だが、「調子落ち放置」をしても、得点力は低下しなかった。大連勝やチームの好調を止める要素にもならなかった。調子が悪い選手、その時々でアウトになりやすい選手がいても、不思議と打線全体の調子を悪くするマイナス作用はもたらさなかった。
優勝前の11連勝中のノイジーが好例だが、二死のチャンスで凡退しチェンジになってばかりいる選手がいても、それが「いい切れ目」となって、そのあと「得点できる巡り合わせ」になる、そんなことがしばしばあった。
「安定による強さ」はポストシーズンも変わらない
エラーした直後にゲッツーを取る、バント失敗の後に好走塁、無死満塁で三振の後にタイムリー……今年の阪神はシーズンを通して、「誰かの失敗を別の誰かがカバーする野球」をした。シーズン中盤けっこう長く佐藤の不調時期は続いたが、大山を中心に他の打者がカバーした。逆に終盤大山のバットが鈍ったときには、絶好調の佐藤がひとりで打線を引っ張った。
失敗もあれば不調もある。それは普通のことだから、極端に深刻に捉えることはない。近くにいる者がカバーしてやれば、チームとしての力は低下しない。むしろ「補い合う力」によってチームの結束は強まる。迷いや悩みをひとりで背負い込まず、目の前の試合、目の前のボールに集中できる。結果、安定的に勝ち続けるチームになった。
岡田監督が築いた「普通にやる」はなかなか奥が深い。しかし、そんな岡田野球が短期決戦であるクライマックスシリーズでも通用するのか。長い長い「待ち時間」、ファンの間では退屈しのぎにそんな話題が飛び交う。
過去、ポストシーズン戦績が芳しくないのは事実。しかし、岡田監督も以前のままではない。それはこのシーズンでよくわかった。だから、「普通を貫く」という理想を極め、もう一度、阪神ファンを「極楽浄土」へと導いてくれるものと私は信じている。
チームは最後まで快進撃を続けましたが、文春野球の阪神チームは残念ながら今季も最下位をひた走る結果となりました。「終わり良ければ……」でいい締めとさせてもらえたら最高です。下にあるとおり、オリジナルサイトでポチッと応援の1票をお願いします。今季も文春野球コラムペナントレースで私の記事を読んでいただき感謝いたします。
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